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南へ・・ 第27話「残波」

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豊(ゆたか)の故郷たる佳き海が、次第に視界から消えて行く。海沿いを少しずつ離れた、帰路のJR紀勢東線は、短いトンネルを数ヵ所抜けると、険しい登りを緩める為の、大きなΩ(オメガ)型の配線を辿る。登り坂の為、流石(さすが)にスピードはやや鈍るが、ストレスを感じないレベルのペースを維持しつつ、上り特急「紀伊84号」は、南以外の全方向を向きながら、カーヴをクリアし、荷坂越(にさかごえ)の頂を目指す。

60km/Hを下回る緩いペースで、峠を越える、長めのトンネルへ。走行音と風切り音が強くなると、途端に二人の芳しからぬ談笑が始まった。周(あまね)「しかしまあ、何かなあ。ホント、トンデモな三日間だったな!」と言えば、豊も「・・ですよね。結局、お世話になった美波さんを、二人で手籠めにしちゃったし、七里御浜で会った、木下さん姉妹にも、しっかりヌいてもらえて・・」こう返し、笑う。その一方、視線の方は、トンネル出口を間違えぬ様、絶えず窓外に向けている。復路は後方の席につき、かなりやり難いのも事実だが。

周「そうだなあ。お前の『手籠め』って表現も良いけど、むしろ『輪姦(まわ)し』に近いんじゃね?」 豊「ああ、アハハ・・言われてみれば、そうかもですね。阿久比(あぐい)さんと二人だったから、俺とした事が・・加減しなきゃ、とは思ったけど、知らず知らずの内にって事は、あったかも・・」そう返し、苦笑す。

「しかし・・」周は続ける。「お前に叱られるのは覚悟だが、海辺のあの静かな町に、あんな上玉がいらすなんて、俺、惚れ込みそうだわ。お前の故郷に」 豊「そりゃ、有難うございます。まあ、女性に関しちゃ、当たり外れがありますから。それに阿久比さん・・」 「うん、何かな?」 「花井 宙(はない・そら)さんとのお仲はどうなるんですか?」些か、突っ込み気味だ。

周、一瞬たじろぐも「ああ、心配有難う。それは俺も、考えがあるからさ。彼女には、上手く話す様にするわ」 豊「宜しく、お願いします。その辺は、もう俺じゃどうにもなりませんから」 「OK、任せとけ。それにしても美波さん、絶頂近くの本音って、凄かったな!」

豊「ああ、あの露骨なお言葉・・ですか?」 「そう、それそれ。まさか、彼女の口から『チンポ!』なんて言葉が飛び出すとはなあ!」周、そう言って苦笑す。豊が「そう言う貴方も『オマンコ!』って、しきりに言われてましたよねぇ」と突っ込むと、周「あれ?それ、お前が先に言ってなかったっけ?」と返し。結局「まあ、どっちでもいいか・・」と言い合い、苦笑し合うのであった。区切りの所で「阿久比さん、ここでやめましょう。トンネル出口です!」と豊に制され、周も頷くのであった。

峠の、長いトンネルを抜けて暫くは、幾つかの短いトンネルを交え、夕闇迫る山峡(やまかい)を、軽快に下って行く。それから二人は、初日に訪れた造船所の印象や、二日目朝の、漁の事、七里御浜で出会った、木下姉妹との、当たり障りのない話題、それに帰る日の午前、見る機会に恵まれた、豊の、思いの他達者な操船の事など。「お前のお父さんと、又漁にも行きたいけど、お前の船にも、又乗りたいな」周は呟く。聞いた豊は「必ず、又機会を作りますよ。一緒に漁に出るのは、祖父や親父、弟の邁(すすむ)や漁協の人たちの希望でもあるんです」と返した。

トイレの用を交え、そうこう言い合う内に、伊勢平野の要衝 多気(たき)に出る。時刻は 5pm。ここから N市中央駅の終点までは、約一時間半弱である。乗務員たちが交代する様だ。少しおいて発車。次の停車駅 M市で、列車の指定席は満席となった。

「そろそろ、食っておくか・・」周と豊は、示し合せて、緑が持たせてくれた折詰で夕食に。魚介、海草と五目飯の面々だったが、中に、周が感嘆した、マンボウの唐揚げが見られたのは好感だった。「好いなあ、最後までこれが味わえるわ!」 「俺も、同感ですよ!」食事を挟み、終点までの約一時間は、短い仮眠の後、帰り際に触れた、原子力発電所問題の続きなどが話材となった。周「しかし待てよ。発電所が立ち消えになったは良いけど、今度は使用済み核燃料の処理施設用地の問題が出てるみたいな・・」と言うと、豊も「そうなんですよね。その問題がありそうなんで、俺たちの地元も、対応を考えておかないとってとこでして・・」などと返し。6:30pm前、列車は N市中心部へ入った。

「豊、世話になった。お疲れさん!」 「はい、阿久比さんも、お疲れ様でした。実家へのお帰り、気をつけて!」N市中央駅で、豊と別れた周は、その足で、A県東部・三河地区の実家へと帰り、二日後の午後、戻って来た。豊の父 樹(いつき)から預かった土産の類は、その過半が周の親許向けのもの。後、鰹節二本ずつと、干物と青海苔(のり)の一部などが、周のバイト先と、前年来世話になる、花井家への土産となった。居所へ帰った日の夜、バイト先へ、数日後、花井家へ届けたが、勿論いずれも好評であった。答礼に、彼は宙から、京都・宇治産の高級茶葉を拝受した。

月が変わり、4月初旬、周と宙は N市の同じ私立大学に通い始めた。宙と何度目かの夜を過ごしたのは、その入学式の夜。その日の朝、訪ねて来た宙と唇を交わした周は「続きは夜な・・」の一言を残した。「ええ、約束よ・・」の言葉が、入学式の式典中も、続く「オリエンテーション」と言われる、入学関連行事の間も、彼の耳に残り続けた。宙はその日、N城址北東の親許へは帰らず、周の居所に泊まって、翌日の大学行事に臨むつもりらしかった。

初日のオリエンテーション終了は、夕方近く。宙と周は、暫く大学構内に留まり、施設を幾つか見て歩く。学生食堂で、早めの夕食の後、JR中央駅周りで少しの買い物、茶話会などして、7pm過ぎに居所へ。トレーナー上下に着替え、TVをチラ見しながら周の入浴準備の間に、同じくチラ見しながら、宙が寝品の甘味を少し準備。交代で入浴。後から風呂を出た、周が見たものは「やっぱり・・」の光景であった。

「おめでとう、お互いに・・」宙は、アニキャラが着そうな、白のミニコス上下に替えていた。上体の露出の大きいタンク・トップ調のキャミソールに、フレア・ミニのアンダー、それに二ーハイ・ストッキング。後から分るだろうショーツは「T」の可能性大だ。「ああ、おめでとう・・」周は返すも、もう下半身の礼儀を正しかけていたのも事実だった。

宙は続ける「周さん、今夜はね・・」 「うん、何かな?」周が返すと「先週のお土産は、素敵だったわ。特にあたしは、マンボウのスナックがね。でも・・」 「でも、何だろう?」 「あたしへの、一番のお土産を忘れないで欲しいわ。それは・・」 「うん、聞くよ・・」 「貴方が、あの海辺で出会って、経験した事を、全てあたしに語って欲しいの。言葉だけじゃないわよ」 「ああ、言葉だけじゃない・・かもな」 「美波先生と出会って、習ったはずの、素敵な事共よ。分るでしょ、それは言葉じゃ済まないはずよ」 「・・ちょっと、待ってくれるか?」周は、答えるのに、ちょっと整理が必要だった。

「はい、いいわよ」宙の答えを待って「つまり、美波さんに習った事を、貴女に教えろってな・・」 「その通り!それは、言葉だけじゃ済まないでしょ?『行為』で教えて欲しいのよ」 聞いた周「参ったな・・」観念した様にこう思った。あの三日間、美波とも会って、会食した位は話したが、更に深い所へ行った事を、勘で嗅ぎ取っている様だ。「ああ、分かった・・」

「実はね・・」宙、更に続ける。「先日、貴方があたしの家を訪ねた時、普段と違う香料が匂ったの。ほんの微かだけどね。それで・・」 「ああ、それな・・」周は、思い当たる節があった。宙は続けて、その香料のメーカー名と品番を言ったのだが、それはまんま、美波が愛用する香料のそれだったのだ。

「いや、参った!そんなとこから・・」観念した周、こう返す。そして・・「分った。そこは教える。言葉だけじゃなしに」 宙「そうよ。言葉だけじゃなく『行為』で教えて欲しいの。そうすれば、直ぐ怒ったりはしないわ」 「分った、じゃ、始めるか?」 「そうそう、早く始めようよ」これを受け、周はソファに座り、宙も、傍らに陣取る。「よし・・」周は、宙を抱き寄せ、互いの背後に両腕を回し、唇を交わしての開始挨拶。十秒程後、肩から腋、右胸の丘へと手を走らせるも・・「嫌よ!」恐らくは、初めての拒否サインかも。

「どうした?」周が訊くと、宙は「もう暫く、首筋や肩とかを撫でてからにして欲しいわ。今の出方って、早過ぎる。まるで去年、貴方が、初めて地下鉄の中で仕掛けて来た時みたい!」 「ああ、悪い悪い。やり直しだな」周、宙への口づけから、首筋や肩、腋、腰上の括(くび)れにかけ、もう一度入念に愛撫。それを見た宙、ニッコリして「今度はいいわ・・」 「悪い、待たせた・・」確かめた周、宙の背後から回した右手で右の、左手で左の、胸の丘を、キャミソール越しに摩(さす)り始め。「ああ、いい感じ。初めからこんなので、宜しくね・・」 「了解、気をつけよう・・」次第にキャミを下方にずらし、現れた両の乳房に、更に摩りを入れ始めたその瞬間、周のスマート・ホンにLINE着信。美波からだった。「宙ちゃん、悪いな。ちょっと時間をくれ」宙、一瞬表情を曇らすも、頷いた。

「周さん、あの時は良かったわ。あれから元気?」周は、一瞬返信を躊躇(ためら)うも、宙は「ふふ、面白いわね。どう?あたしの目の前で、美波先生に返信って、してくれるかしら?」 これを聞き「仕様がない。まあ、いいだろう」 そして「こちらこそ、有難うございました。ええ、お蔭様で!」 「本当にね、あたしもある意味、貴方や豊の先生として、あの場限りの授業のつもりだったの。でも・・」 「でも、何でしょう?」「やっぱりね、ちょっと燃え上がっちゃって、その熱がまだ残ってるのよ」 「熱ですか・・分ります!」周は、傍らの宙の視線を気にしながら、慎重に返信を送る。見ている宙は「面白いじゃないの。ありのままを続けて・・」と促す。その表情、次第に、美しくも薄気味悪い笑顔へと変わって行く・・
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 桜井あゆ
東京スカ・パラダイス・オーケストラの今回楽曲「いつかどこかで」下記タイトルです。
いつかどこかで
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