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交感旅情 第5話「序奏」

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寒暖差の大きい 4月後半だったが、一部の日を除いては、概ね春らしい穏やかな日々だった。ただ、これは天気の事。新年度の事とて、宙(そら)や周(あまね)は新学期、初美(はつみ)と中条も、新年度の仕事とかで、それぞれに忙しい日々を送った。次の週末、4/22と23の土日曜は、臨時出勤や大学の課題処理とかで、前述の面々が、夜 顔を合わせる事はなかった。これは、続く大型連休の期間を、確実に休める様にする為の準備でもあった。

4/28の金曜、いよいよ出発の夜である。昼間は快晴、西に三日月を仰ぐ夕方、幹事格の中条はこの日、いつもより一時間程早めに仕事を終え、専務の実妹が用意してくれた、夕食の弁当四人前を携えて、車で勤務先を後に。途中一旦、初美の居所へ回り、同様に早めに帰っていた彼女を乗せて居所へと戻る。午後早くに大学の教科を終えた、宙と周も、ほぼ同時に N市営地下鉄で、中条の居所に集まる手筈であった。

6pm頃、旅姿を整えた四人が揃った所で、中条「皆、無事に出かけられる事になって、良かったな。これから月曜まで足かけ四日間、宜しくです!」 「こちらこそ、宜しくお願いします!」中条以外の三人が挨拶。中条はこれを受け、女二人に、先に入浴を促し、彼女たちも快く応じ、一旦その場を離れ。

中条「いよいよだな。夕飯は妹が用意してくれたから、ボツボツと済ませばいいだろう」 周「そうですね。ここから JR中央駅辺りまでは、永野さんが送って下さるんでしたっけ?」 「その通り!永ちゃんが、10pm少し前に迎えに来るはずだ。だから、ここでビール飲んで待つ事もできる訳よ」 「分りました。出かける前の、景気づけですか?」 「まあ、そんなとこだな」男二人は、こう言って笑い合った。

半時程後、先に上がった女二人と入れ替わりに入浴。中条の妹から預かった、夕食の準備。初美「専務さんも、こう言うお料理は考えられてるわね。揚げ物の一方で、お野菜もちゃんと添えられてるし」と言えば、宙も「そうですね。ホント、いい教科書だわ」と返したりで、小半時が過ぎる。

「では、前途の無事を祈って、乾杯!」 7:30pm頃だろうか。未成年の宙はペリエ、他の三人はアサヒ・スーパードライでグラスを上げ、夕食。周が切り出す。「夜行高速バスは、JR中央駅南のバスタから、10:30pm過ぎの出発でしたよね」 対する中条「そうだ。10:40pmの出発予定になってるな」と返し、更に「本当は、去年 小町先生が乗られた午後一番の便で行きたかったんだが、皆の仕事とかの都合で、そう上手くは行かなんだ。そこの所は、分ってくれな」と続けた。

周「いえ、とんでもない。行ける機会(チャンス)を頂けただけでも、喜ばしいですよ」笑顔で返し、初美も「ホント、周君の言う通りだわ。行けるだけでも幸運(ラッキー)よ」、宙も「あたしも同感です。まだ見た事ない所へ行けるのは、期待でドキドキですよ」笑って応じ」 初美「でも、夜中に通る所って、見て分るかしらね。それがちょっと、気になるけど・・」 中条「まあ、眠ってれば仕様がねぇよ。行程の真ん中辺り、G県内で絶景があるんだけどな」

周「絶景ですか?分ります。それ確か、峠みたいな所から、眼下に街並みを見下ろせるとこですよね」 中条「その通り!冠着(かむりき)って言う峠道から、県都のG市街が一望に見渡せるんだ。大きなC川沿いに、家並みが展開してるのが、手に取る様に分る」 宙「ホントは、昼間がお勧めなんですね」 中条「そう、昼間行ければベストだが、でも夜景も魅力だな」 初美「じゃ、起きられればその夜景が楽しめるって事ね」 「まあそうだ。丁度何て言うか、星空の天地を逆さにした感じで・・」そう言うと、女二人は「早く言ってよ!夜景の方が、素敵そうじゃないの」とどやし、苦笑で応える中条であった。

夕食の片づけを終え、てんでにTVやPCネット、スマート・ホン画面のチェックなどで過ごす内、9:30pmを迎えた。「そろそろ、出かける準備を・・」と、中条が他の面々に伝えるのと、彼のLINE受信反応がほぼ同時。永野からだ。「お待たせしてます。只今から伺います」 「宜しくお願いします。こちらは準備OKです」中条も返信す。

一同は、キャリー・バッグなどの手回り品を整え点検し、各自の衣裳も整えて、階下へと移動準備。朝方はまだ肌寒く、思い思いに薄手の上衣は当然も、下方は、宙だけが長めのスカート姿なのが、中条には気になった。「宙ちゃん、パンツかジーンズの方が良くね?」 「ご心配有難うございます。バスの中は、これで大丈夫よ。ジーンズとかは、着替えで持ってますから」笑顔で答える彼女であった。

揃って階下のロビーに降りた 9:50pm頃だろうか。永野の駆る、ワン・ボックスの大型タクシーが横付けされる。「今晩は、今夜も有難うございます!」 「永野さん、宜しくです!」中央二列目に男二人、最後列に女二人、後方に一同の荷物を載せ、出発。

永野が言った。「今夜は、明日からの連休前夜ですから、どこで道路が渋滞するか分りません。念の為、二時間位の遅れは、見積もった方が良いかも知れませんね」 「そうだね、特に首都圏方面への中央道が要注意・・かな」中条が返すと、永野は続けた。「それと、やはり上高地がシーズン・インしましたからね。特に今春は、桜の見頃と重なって、相当な人出みたいです。中央道を外れても、G県下は要注意でしょう」 「OK、有難う。それ、気にしとくわ」 「後、バスは独立三列シートの、トイレ装備でしょうか?」 「ああ勿論、どちらも有りだ。ちと狭いけど、走行中も何とかなりそうな・・」 「良かった!・・なら、一安心ですね」約十数分で、バスタの階下へ着。

「有難うございました。又、一日月曜の夕方に。行ってらっしゃい!」 「永ちゃんもお世話様、気をつけて。又帰り、新幹線側でな!」会釈で車を降りると、一同は、有名な大型人形オブジェが聳える傍らの、長い上りエスカレーターで階上のバス乗り場へ。長距離高速バス乗り場は、ターミナル3Fの8番乗り場から出発する。多客の今夜は、二台で新潟へ向かう様だ。

「買い物のある人は、今の内に済ませておいて。後、トイレもできるだけな」中条の言葉に、宙と周はコンビニの売店へ、初美はトイレを使いに向かう。周と中条も、入れ替わりでトイレを済ませたが、宙だけが、向かう様子がない。「大丈夫か?」中条が一声かけたが「有難う、大丈夫よ」優れた笑顔だけが、返って来た。

先発の、四国方面便が出発した10:30pm過ぎ、予想通り、二台の名豊電鉄バスが現れ、乗り込みを開始。最初に、床下トランクに預ける荷物を交代の運転手(ドライバー)に渡し、宙、周、初美、中条の順で乗り込み。席は進行方向右側の前三列と、独立三列の中央、前から三番目。この席は「道中、宙ちゃんと話がしたい」初美が望んで座り、窓側三番目が宙、その前の二番目に周、中条は、結局右側先頭席になった。

乗車に先立ち「皆、必ずシート・ベルトを着ける」様指示し、又、早めに休める様、背もたれのリクライニングを倒す様促す中条。女二人の後方は、トイレのスペースと通路の為、乗客がいない。心置きなく休める様に、との配慮だった。「夜中に起きてられると良いわね。新(しん)さんのお話にあった、素敵な夜景が見たいから」 「ホント、無理してでも起きてなきゃ・・」彼女たちは、そう言い合って笑った。

二台両方が満席となった10:40pm、1号車を先頭に、新潟へ向け出発。中条たちは、後続の2号車に乗る。この路線は、他の多くがそうである様に、普段は一台だけで運行されるが、乗客の多い連休前などは、増車される事があるのだ。夜の街を抜けた二台のバスは編隊を組み、バスタ東方のI.Cから都市高速入り。まだ混雑する車列を上手くかわし、二十分程で郊外へ出、中央道に合流して行く。永野の話通り、車は流れているが、かなりの通行量の様だ。

N市を発って最初の休憩は、日付が変わる直前。隣のF県からG県に入る少し前の山間近くに、「E峡」と言うS.Aがある。ここで十数分間停まるはずだ。宙は迷っていた。「どうしようかしら。今度の休憩で、トイレ使おうかな。でも・・」実は彼女は、ある企てをしていたのだ。「その為に、今夜はスカートにしたのよね・・」背もたれを倒して寛ぐシートの下から、程良い揺れ、振動と、カーヴをクリアする時の、僅かな遠心力、それに昔よりずっと静かになった、ディーゼル・エンジンの微かな響きも伝わって来る。

「何となく、あたしの性感に訴えて来る。これらの振動・・」想えば、困った事になりそうだった。心地良い、それでいて、列車とは違う、完全には遮断されない小さな揺れや振動が、恰もマッサージ器の様に、宙の下方を標的にして来る感じがする。それはまるで、巨大なバスが「宙さん、貴女の中に入ってもいいですか?」とでも言いたげに、シートの下から巧妙に突き上げて来る様な感触があった。

「ああ、嫌らしいわ・・」宙は呟く。「このバス、運転手(ドライバー)さんの他に、触手でも持ってるのかしら・・?」あり得ない、そんな妄想が、脳裏を霞めたりする。彼女の下方が、容赦なく熱せられて行く。その途上、最初の休憩地へ。連休前夜らしく、多くの乗用車や大型バイクにRV、大小トラックや貸切バスなどで賑わう駐車場を抜け、他の客に伍して、念の為、地上トイレを済ませた宙は、一足早く戻り、己の席の下にあるトイレを、こっそりと覗き込んだ。これが、一種の邪心に火を点けた。「ああ・・」艶めかしく呟く宙。「周さんと・・ここで、してみたい。拙いのは、分ってるけど・・」
(つづく 本稿はフィクションであります。物語中の夜行高速バス席番は、実際と異なります)

今回の人物壁紙 瑠川リナ
葉加瀬太郎さんの今回楽曲「冷静と情熱の間」下記タイトルです。
冷静と情熱の間

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