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交感旅情 第10話「遅花 (おそばな)」

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大型連休初日でもあり、JR新潟駅構内は、多くの旅行者や帰省客で賑わっていた。朝方の通勤通学ラッシュ並みと言っても良い位かも知れない。しかも、その多くが大型リュックやキャリー・バッグなどを携えているのだから、少し鬱陶しいレベルかも知れない。そんな中、A県から到着した中条ら四人は、JR信越線の上り快速列車「あがの」(会津若松行き)で、新潟の山間へと向かう。

電車の入れぬ、ローカルな磐越西線へ直通する為、列車はディーゼル気動車の三両編成。パッと見、信越、越後、白新の各線を走る電車よりやや小柄にも見え、それ故に狭い車内は忽(たちま)ち混雑の様相を見せる。それでも、何とか四人一緒のボックス席に着けたのは幸いだった。

「皆、悪いな。やっぱりさ・・」混み合う車内で、中条が、他の三人に向けて言う。「地方路線の普通列車じゃ、混むからと言って、おいそれと増発や増車とかはしてくれねぇんだよな。自治体が主催の、大きな地域行事(イベント)や、花火大会とかでねえ限りは・・」 「・・でしょうね。毎年のお祭りとかだったら、時期が分るから、鉄道会社としても、対応できるんだろうけど・・」初美が返す。「まあ、そんなとこだな。それと、快速や普通じゃ、皆そんなに遠くまでは行かん。乗るのはせいぜい、始発から一時間位のとこまでみてぇだし・・」それを聞いた宙(そら)が言った。「・・て事は、やはり地元の皆さんがよく乗られるって事で良いのかしら?」対する中条「それ、一つ大きくあるな。普段はその辺りから通勤通学してるって事。まあ、今様の連休中は、俺たちみてぇな遠出組も多いだろうけど・・」

話の間、周(あまね)は、プラット・フォームに一旦降りて、先発する他の列車の撮影などをした様だ。程なく戻り「伯父さん、この車両の番号『110』は頂けませんねぇ。側面(サイド)の車型表記が、片仮名の『キハ』の後『110』ですと!自分は余り、良い思い出がありませんで・・」 「ハハ、そうか。俺にゃ、少し理由が分るが、まあ余り気にせん事だよ。因みに、片仮名の意味は『キ』がディーゼル気動車、隣の『ハ』が車両等級(ランク)で、普通車の意味な。ま、覚えんでもええ事だが・・」中条が返すと、周は「いやいや、それ、興味深いですよ。JRの電車だと、同じ側面の表記が『モ』や『ク』『サ』とかで始まってますよね」 「そうそう、話すと長くなるのでいかんが、浅いとこで『モ』表記があるのが動力あり、表記がなければ動力なし。これには、屋上に電気を取り込むパンタグラフが載ってるのも多いな。『ク』表記なら運転台があって、先頭に出られるし、なければ出られん中間車だ。それ位は、覚えても悪かねぇかな」

「伯父様、後、車両の設備でも等級(ランク)があるみたいですね」黙って聞いていた宙が、急に割り込む。「その通り!片仮名表記の右側な。グリーン車が『ロ』、昔あった一等が『イ』で、今は表記が見られんが、一部の新幹線にある「グラン・クラス」て言う、超特別席がこの立場だな」中条が返すと、彼女は「そうかぁ、チラッと聞いたんだけど、やっぱり日本にも、そんな区分けがあるんですね」 「それでさ、帰りにちょっとその辺を用意したのさ。まあ、楽しみにしててくれ」中条の言葉に、短く微笑んで返す、宙であった。

「やはり、地方の大都市は、(作法)マナーが良い様だな・・」地元の N市にいると、何度は遭遇する 危険で不愉快な駆け込み乗車もなく、定刻通り、快速「あがの」は戸閉を経てディーゼル・エンジンの回転を高め、新潟駅を後にする。高い加減速性能を誇る、110型車両の三両編成。最新の電車にも引けを取らぬ、優れた走りで南下して行く。近年、新潟市と合併した新津(にいつ)、次に五泉(ごせん)と、主な市街に停車して行く。

中条が言った。「五泉の辺りから、少しは空いて来る。ここを出ると、チューリップの畑が沢山あるから、見逃がすなよ」 「有難う。楽しみだわ!」笑顔で返す、女二人だったが、宙は少し別の事を感じ、考えていた。「何かしら?昨夜の高速バスもそうだったけど、ディーゼル・エンジンの響きって、何かしらね、あたしの性感に訴えるのよ・・」彼女の表情、そして両脚が、少し緩んだ様な。隣に座る周「あ、彼女(こいつ)、又感じてるな・・」ボンヤリとだが、理解できる気がした。

車窓右側に、大きな JR車両基地を臨める新津を発つと、電車や電気機関車の走れる、電化が施された信越線と別れ、電力を送る架線のない磐越西線へ入った列車は、左に大きくカーヴを切り、市街地から遠ざかって行く。五泉、更に山側の馬下(まおろし)・・確かに中条の言葉通り、停車の度に、まとまった下車客があった。入れ替わりに乗る客もあるが、多くはない。

馬下から、奥会津地方の水源より、新潟市内に流れ下る、堂々とした阿賀野川と並んで走る。少し山間に入り、咲花に着いたのが、新潟を発って約40分後。この県屈指の温泉郷だ。今夜の宿「S亭」は、殆ど駅前。従業員たちの元気な挨拶に迎えられ、まずは大きな荷物を預ける。勿論、客室はまだ使えないが、喫茶室には出入りできた。一同は、ここで、車にての木下姉妹の到着を待つ。

由香と由紀が着いたのは、ほぼ15分後。「順調だった様で、良かったな」 「ええ、お蔭様で、道路も混んでなくて・・」周と中条は、車からの荷降ろしを応援するなどしたが、この時、ちょっとした眼福があった。前かがみになった、由香と由紀のブラウスから、ブラ付とは言え、胸の双丘の様子が見えたのだ。

「周君、後で話す!」中条はそう言い、姉妹に「じゃ、喫茶室で待ってるから」一言の後、周と共に席へ。初美と宙は、その間も朝の散策の折の話をしていたが、姉妹が合流すると、話し声の音量(ボリューム)も上がる様だった。周は、そっと中条の傍らに身を乗り出し「伯父さん、さっきの事ですがね・・」 「ああ、聞くよ。何だろう?」 「ズバリ言います。由香さんも、由紀ちゃんも、好い胸してますね~!」 「ハハ、本音が出たな。ブラ・カップはどれ位だと思う?」 「う~ん、ちと微妙かもですが『D』位・・かな?」 「周君、好い勘してるじゃねぇか!俺もその辺だと思うんだ。これは・・これはだぞ」 「はい・・」 「もしかして・・の条件付だが」 「ええ、伺いますからどうぞ!」 「今夜、デカいサプライズがあったりする・・かもな!」 「ハハ、そう言う事ですか。まあ自分も期待しようかな・・なんて思いますが」 「よしよし、それがあるといいな!」男二人は、静かに笑った。

それから半時、熱いコーヒーやココアを嗜んでの談笑が終わり、木下姉妹は、撮影用具他だけを持ち、車に戻る。「じゃ、伯父様、上野尻(かみのじり)ですね」 「そうそう。東北電力のダムと発電所の脇に、ちょっとした公園があってな。上手くすると、そこの桜がまだ見られそうなんだ。所で、途中はどこで撮るのかな?」中条が尋ねると、由香が「この先の、五十島(いがしま)と言う辺りで構えようかなって思ってます。国道から少しそれるけど、カーナビもあるから大丈夫よ!」 

中条「あの辺、花はねぇかもだけど、いいの?」 由香「いいですよ。お花は上野尻のが良さそうだし、あたしたちも鉄道写真は慣れてないから、余り難しくない所の方が良いですし」 「OK。じゃ、気をつけて。又後で!」 「有難うございます。後程!」 10am少し前、場所取りを要す 木下姉妹が、車で先発す。見送った中条たち四人は、ゆっくりと咲花駅へ。

10am少し過ぎ、先程乗って来た、上り快速に続く普通列車が入る。同じ三両編成だが、一番後ろの一両は、近年入ったステンレス車体が目立つ。「話のタネに、新車乗ってみるか?」中条の提案に「好いですね」「そうしましょう」他の三人も続き、やはり空いていた四人ボックスに席を取る。

「E120」と呼ばれる新型車両の走りは、ややうるさかった。ディーゼル・エンジンの音響はヒステリック。座席も固めで、余り長時間の乗車には向いていないかもだ。「ですが、普段乗りが短めなら、これでも良いんじゃないですか」と、周などは理解を示した一方、少し残念そうなのが、宙。「何かしらね、新車のエンジン音は、あたしの性感を高めてくれないみたい。同じディーゼルでも、相性とかあるのかしらね」様子を見た初美「宙ちゃんは、さっき乗った、以前の車両の方が良いのかしら?この前のがそうだから、ちょっとの間、引っ越そうか」の提案に「うん、有難う!」と大きく頷き、周や中条も同意し、一旦、前にいる 110型車の方へ。

残った、男二人の会話を少し。「ああ、いやいや。彼女たちの事は、暫く任そうや」 「それがいいですね。所でこの辺は、まだ桜が見られそうな・・」 「そうそう。県境から会津の鶴ヶ城の辺までは、桜の開花が少し遅いんだよな。有名な、青森の弘前程じゃねぇが」 「聞いた所じゃ、弘前は今、七~八分咲き位らしいですよ」 「七~八分か、そうか。今から向かう 上野尻ってとこが満開少し過ぎとか言ってたから、弘前も、大型連休中には見頃だろう。俺もまだ見てねぇが、これから行くとこも、上手くすりゃ凄いぞ!」 「そうですか、楽しみですね」

小半時程話していた、初美と宙が戻り、山峡(やまかい)を辿る列車で約一時間、11am少し過ぎ、列車は上野尻に着いた。「ようこそ!」「こんちは!お元気そうで何より!」業務委託となった、小さな上野尻駅には、日中のみ、高齢の地元女性が駅務の為 詰めている。居所は、ごく近所の様で、何度か訪れた 中条とも顔馴染みだ。「よかった。桜はまだ見られそうでね・・」駅の女性から話を聞き、徒歩約10分強の発電所辺りへと向かう。既に多くの花見客と、ほぼ一時間の後、彼たちを降ろした上り便を追う様にやって来る、蒸機の列車「SLばんえつ物語」を迎える鉄道愛好者たちが、要所に集まっているのが見える。前後して飛び込んで来たのは、ほぼ期待通りの、陽春の光景であった。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 上原亜衣
葉加瀬太郎さんの今回楽曲「Asian Roses」下記タイトルです。
Asian Roses

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