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交感旅情 第29話「道中」

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JR磐越西線の列車に乗る為、一旦 前夜の宿近くまで戻る中条たち四人と別れ、由香、由紀の木下姉妹は、昨日から借り受けている乗用車 トヨタ・シエンタを発進させ、新潟市中心部からの R49を、阿賀野川沿いに、東へと向かう。「道の駅 阿賀の里」を発って暫く進むと、阿賀野川の幅は一気に狭まり、川沿いの崖を、トンネルや洞門でかわす、山間の道へと姿を変える。勿論、一級国道の端くれだから、追越し禁止の黄線を挟み、上下各一車線は確保されるが。

「今は、楽になったわぁ!」ステアリングを握る、姉の由香 呟く。「楽・・何がやねん?」隣の助手席に収まリ、カーナビ・システムをチェックする 妹の由紀が訊くと「ちょっと前までな、この道みたく、頻々とトンネルとか洞門に出入りして、その度(たび)に、前灯(ヘッド・ライト)のスイッチを、目まぐるしく オン・オフせなあかんかったからな」 「何で?そんなん、点(つ)けっぱでええやん・・」 「そうは行くかいな。トンネル出たとこが少しでも長かったら、間抜けや思われて癪(しゃく)やし、蓄電池(バッテリー)だって、消耗するさかい・・」 「んなもん、ロービームにしときゃええやんか。今はどうなん?」

聞いた由香「そう、それはな・・」 由紀「はい、聞きましょう!」 「今の車は、ちっとでも暗うなると、センサーが働いて、自動で前灯が点く様になっとるねん!」 「ほう!そら、頭ええなぁ。逆に、お姉ちゃんがアホって言うか、間抜けに見えるかもやけど」 「うざいわい!調子こきよって!幾ら夕べ、周(あまね)君に天国連れてってもろた言うても、昼間は酔うとったらあかんで!」 「はいはい、お姉ちゃんも良う言うわ。先に 周さんとまぐわって、もうアヘアヘ顔やったやんか。よっぽど彼(あのひと)のチンポに感動したと見えて・・」些か、嫌味をまぶした由紀の言い方であった。

由香「アヘアヘで悪かったな~!」 由紀「まあまあ、誰も『バカ、アホ、タワケ!』なんて、言うとらへんやんか。何たって、お姉ちゃんやからなぁ・・」 「まあ、分ればええわ。所で、後少しやな」 「せやせや!又周りが開けて来たな。さ、そろそろ駐車場所探そ!」 「うんうん、それがええな」姉妹の車が、少し開けた三川(みかわ)と言う地点に入ったのは、道の駅「阿賀の里」を発って、十数分後であった。

R49 から見て左奥に、中学校と JR三川駅が見える。なるべくなら、その近辺まで行きたいが、中条から「学校周りは、駐車余地なしだ。JR三川駅前も、路線バスの駐車場だから、停める訳にはいかねぇだろうな。なるべく国道沿いで見つけるべきだろう」の様に教えられており、姉妹は、その通りにするつもりだった。国道が線路を跨いだ少し先に、コンビニ店の建つ、広めの駐車帯があり、反対側にあるのが少し鬱陶しかったが、そこに車を入れる事にした。彼女たちの他、若干数の車が進入していた。

手ブレーキとシフトの「P」位置 窓を含む施錠を確かめ、撮影機材を手にした姉妹は、線路近くへ。国道をそれ、数分も歩いた所の広い敷地に、この地区の中学校が設けられ、その傍(かたわ)らに、遅咲きの八重桜が見られる木が何本か立ち並ぶ。他に、数人の撮り鉄たちが展開中。中に、初老の、この道の有力者らしい人物がいて、他の者が危険な挙に出たりせぬ様、眼を光らせ仕切っている風情。姉妹は、その男たちに一礼した。

「お姉ちゃんたちは、どちらから?」有力者らしい男が訊くと「はい、ウチらは大阪からでして」由香が答え。「昔は(女の子の撮り鉄は)珍しかったけど、今はちょくちょく見るんだよね。『鉄子さん』って言うの?二人位は大丈夫だから、俺たちの隣で撮ると良いや」 「はい、有難うございます!」校舎の傍で用意をしている最中に、会津方面へ向かう、三両編成の普通列車が通る。

由紀が言った。「今日は、先頭車が最新型やね。伯父様たち、多分 後ろ二両のどっちかに乗ってられるんやない?」 由香も「ああ、多分な。ここが終わたら、昨日も行った『道の駅 西あいづ』で待ち合わせやさかい」と応じ。 「うん、そやったな。ここからやと、時間 どれ位やろな?」 「多分な、距離にして 40km位やから、一時間前後やろ。ここら辺の、蒸機の通過は大体 11am頃。まだちょっと、時間あるな」

姉妹も、中条の呼び方に倣って、「SL」とは呼ばず「蒸機」と呼ぶ様になっていた。待つ間合いに、姉妹は「有力者」の男やその仲間、人数を増した周囲の撮り鉄たちから、この地点での撮り方の構図、露出やシャッター速度の目安と言った事共を聞き、それを参考に、各々の機材の準備を。車で来た向きは、校舎の反対側路地に停めた者が多かったが、一部に、姉妹と同じ国道沿い駐車帯を利用した向きもあり、又、車でなく JR列車で移動する、中条たちと同様の向きも、若干あった。

「バォォ~ッ!」後少しで 11amと言う所で、例の、太い低音の汽笛が響いて来た。「そろそろ用意な」誰ともなく声をかけ合い、集まった者たちは、その瞬間に備える。動画も任された由紀は、ここで早めに録画を開始。少しおいて、左奥から一条の煙、次いで「ドラフト音」とも称される、速いテンポの排気音(エグゾースト・ノート)と、機関銃の様な、鉄輪がレールの継点(ジョイント)を打つ音、微かだが、客車内電源用エンジンの響きが、混然一体となって近づく。蒸機C57の、漆黒の鋼(くろがね)の勇姿が踊り込んだ瞬間、緊張の極みに上った一同は、確信を持って、一斉にシャッターを切る。列車内は、昨日に続き、ほぼ満席の盛況の様だ。

「お疲れ様でした!」通り過ぎた、列車の乗客たちとも挙手で挨拶した後、現場を離れる「有力者」の男たちを見送り、由香と由紀の姉妹は、徒歩で国道沿いに戻る。「上手く行ったか?」由香が訊くと、由紀は「ああ、まあ上手い事行ったんやないかな?」少し曖昧に返し。撮り鉄の男たちの話から、蒸機列車は、この先の津川と、県境を越えた 山都(やまと)と言う所で、暫くの間 停まるとの事だった。由紀は、由香からの指図もあって、中条に「三川の撮影場所、とても素敵でした」と、LINEを送る。折り返し彼から「慌てなくて良いから、気をつけて来る様に」との返信を得る。

車に戻った由香は「さあ、又行くか・・」と呟く。由紀も「そうやね。ここから西会津までは、ちょいと頑張った方がいい・・かな?」と応じ。JR三川駅前を過ぎると、再び山間に入り、近年新道に替わった R49は、長いトンネルを連ねて、それらの下を抜けて行く。センサーによる、自動点灯(オート・ライト)システムの、本領発揮の時だ。

「うんうん、やっぱり楽やねん!」由香、再び感動した様な。カーヴも緩和され、トンネルの出入りを繰り返して、津川を通過。中条が「高速の磐越道路もあるが、まあ乗らなくても大丈夫だろうな」と言った訳が、分った気がした。津川から西会津までは、初めは山間を、カーヴと坂道のアップ・ダウンを交えて進み、県境を越え、福島県側へ出て暫く行くと、会津盆地の西端に出て、そこから直ぐの、側道を行った所に、昨日 花見と蒸機撮影をした、上野尻発電所と公園が控える。

「後、少しやな」由香が呟く。「ああ、そや!」と由紀は、思い出した様に声を上げる。「何やね?」姉が訊くと、妹は「それにしても・・」と続け。「それにしても、後は?」 「宙(そら)ちゃんの事やわ」 「うん・・」 「まさかな、お姉ちゃん」 「うん、何やね?」 「彼女(アイツ)に、あんな危ない趣味があるとは思わんかったわ」 「何やね?菊(肛門)いじりの事か?」 「そうそう。ウチはああ言うの、ちと ついてけへんなぁ!」

由香 「まあねぇ。年増(としま)なら何でもないやろけど、二十歳前の娘(コ)のやる事やないかもやなぁ。しかも、女どうしで・・」 由紀「せやせや!あれ、どないなんかね?今朝、初美先生の『菊のお花』に仕掛けたのが最初みたいな事、言うてたなぁ」 「由紀ちゃん。・・て事は、この旅で、初めて味を覚えたのかも知れへんな」 「お姉ちゃん。・・だとしたら、かなり危なくね?」 「まあ、そないに警戒せんでもええやろ。もう少し様子見たりゃええねん。ま、何かありゃ、ウチと力合せりゃええし、中条の伯父様だって、力になってくれはるやろ?」 「そうやな。そう思わなあかん・・か」終始雑談を交わしながら、姉妹は、途中一度の小休憩を挟み、順調に、快適に進む。正午少し前、車は「道の駅 西あいづ」に入った。
(つづく 本稿はフィクションであります。次回は 11/2木曜以降に掲載予定です)

今回の壁紙 JR磐越西線 野沢駅東詰 110代ディーゼル気動車 奥の一車のみ 最新の E120型 福島県西会津町 2014=H26,4 撮影 筆者
葉加瀬太郎さんの今回楽曲「セイリング'(Sailing)」下記タイトルです。
Sailing

蒸機 C57 「SLばんえつ物語」走行動画(引用) 下記ナンバーのクリック又はタップで、ご覧になれます。
C57180/3


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