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交感旅情 第33話「意企」

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夕闇近づく、静かな山河に囲まれた田舎駅に、蒸機の列車「SLばんえつ物語」は暫し停車する。先頭の機関車 C57では、乗務員複数が、続く炭水車(テンダー)に積んだ燃料の石炭を整理して、焚き易くしたり、ボイラーの火の具合を見て、燃焼に偏りが出ない様調整する「火床整理」と呼ばれる作業や、足回りに異常がないかの点検、それに最も大事な、水の補給などが、短時間に矢継ぎ早に行われ。その合間に、希望する乗客たちは「キャブ」と呼ばれる運転台内の見学を、交代で許されたりする。

宙(そら)と中条を含め、殆どの乗客は、機関車見物や、駅のトイレの用などに赴き、編成の中程 4号車の展望ラウンジは、無人となっていた。初美はその片隅の席に、周(あまね)を招き入れた。「丁度いいわ。皆、降りてる内に進めましょう」 「はい。何かは・・これから分りますよね」周が返すと「そうよ。見てれば、分る事・・」美しい笑顔で語る、彼女であった。

「実はね・・」初美は続ける。「あたし、一昨日夜、出かける時から、ずっと貴方の様子を見てたのよ。貴方も、様子を見て、あたしに、その事を言おうとしてたんでしょ?」 「図星だなぁ!」そう苦笑しながら、周は「はい。まあ、そんなとこ、ありまして。自分も、そのつもりでおりました・・」と返す。「もう・・貴方から先に言って欲しかったわ!」 「どうも済みません!まだ奥手なんですかね・・」 「大丈夫よ。もう分ったから・・」二人は、見つめ合って笑った。

「停車時間は、後 10分位だったわね」初美、更に続ける。「ええ、確かそんな位です。5:30pm過ぎですね」周の返事を待つ様に、初美は「ふふ、まあ好いわ。周君、最初の挨拶を、しよ!」 「はい、お願いします!」この言葉と共に、二人は唇を合せる。「まだよ。濃いのが欲しいわ・・」 「はい、只今。初美さん、好きです・・」どちらからともなく、舌技も交えた、濃く熱いものに替わって行く。「叶うなら、ここで押し倒したい!」一瞬だが、周の脳裏に、そんな想いも過った。

更に行為を進めようと迷ったその時、ラウンジの窓外に、人影が過った様に思われた。「初美先生・・」周が声をかける。「はい、何?」女が返すと「ここは、これまでにしましょう。お客たちが戻って来ます」周の言葉に「よく落ち着いてられるわね」と思いながらも「分ったわ。続きは夜・・ね」 「はい、お約束します」若者はそう返し、二人は並んで、窓外に目を遣る。この展望ラウンジ車は、天井近くまで窓ガラスが延びた、カーヴド・グラスを用いた開放感のある造作だ。

初美と周が唇を合せていた時、窓外を通ったのは、早めに戻ろうとした 宙だった。何気に通り過ぎ、自席のある、後方の 2号車に戻ろうとするも、展望ラウンジ車の、余りの大窓が、片隅の席に並んで睦む、初美と周に気付くのを助けた格好だ。「ふふ、お二人、やっぱり・・」周が、何とはなしに、初美に関心を抱いているらしい事を察知していた宙だったが、この光景を見て、確信が持てた。

「好いわよ。まあ仲よくやってらっしゃい。あたしも、今夜考えがあるからね・・」続く 3号車のデッキから車内へ戻り、連結部の影から、そっと目を凝らす。濃厚な接吻、今しも押し倒そうとする、周の熱気が伝わって来る様だった。だが、出発時刻が目前に迫る。そんな状況で「行為」を続けるのは、やはり無理だろう。

「でも・・」宙は思った。「これで、今夜の目的が一つ増えたわ。続きは、着いてのお楽しみ。さあ、後暫く、汽車旅を楽しもうかしらね」二人が、接吻を解いたのを見届けて、宙は静かに席へと戻った。その後を追う様に、車内放送が入る。「お待たせしました。間もなく発車致します」程なく、中条、そして例の二人も、席へと戻る。

暮れ始めた、津川と言う田舎駅を、汽笛一声で出発。ここも、盛大な煙と凄まじい蒸気の「記念」を残して加速して行く。断層などで地盤が不安定な事もあり、もう暫くの徐行。それから一定加速して、緩やかな阿賀野の流れに沿って下る。ここも、地元高校の漕艇場があるが、日曜でもあり、練習生の姿はない様だ。

この日午前、由香、由紀の姉妹が撮影に挑んだ三川(みかわ)の辺りも、薄暗さをものともせず、多くの撮り鉄が集結していた。もう静止画は厳しい為、動画メインでトライしているのかも知れない。阿賀野川を鉄橋で渡り、幾つかのトンネルを経て、暫く行くと、前日泊まった 咲花である。

「ハハ、叶えばもう一度泊まりてぇなぁ!」中条が、冗談交じりに言うと「・・ですね、できれば・・」と、周が静かに合せ、初美と宙も「まあ、又今度の楽しみにしましょう」と応ず。再び出発、前日、中条たちが列車を迎えた地点にも、何人かが集っている。「どうかな?そろそろ光線的に、撮るのは難しいんじゃ?」周が言うと「そうだな。そろそろシンドいとこだ。まあ、動画なら良いが・・」と、中条が返す。この辺りからは、山間から抜け出し、列車の速度も心持ち上がる印象だ。

その次の、馬下(まおろし)からは、トンネルもなく、冬場以外は、窓を開けても周りへの影響は少ないだろう。暗くなる直前、田園の畦(あぜ)道を、犬を連れて散歩の地元民がある。その犬、やおら腰を落とし、粗相をした様だ。目ざとく観察していた中条「おい、Kuso犬!」無意識に、この一言が出てしまった。「あ~あ、言うと思った・・」周、溜息をつく。が、しかし・・直後に「バォォ~ッ!」まるでフォローの様な汽笛一声。「伯父様は、悪運が強い・・」初美、そして周と顔を合わせた宙、思わず笑った。

越後平野に出、最初の街、五泉に入る頃には、もう夜の帷(とばり)が降り始める。後は、半時程を速いペースで流し、終点・新潟を目指すばかりだ。ほぼ同じ頃、車での撮影を終えた、由香、由紀の木下姉妹は、中条たち四人に先立って、新潟入りしていた。

喜多方を発って、本当に沿道に一軒の店舗もない尾登(おのぼり)と、阿賀野川を鉄橋で渡る、日出谷(ひでや)でこの日の撮影を終えた姉妹は、直ぐに山間を離れ、20分強走った 津川I.Cから磐越自動車道へ。途中、一定の混雑はあるも、渋滞を免れ、新潟東I.Cから中心部へ。この夜の宿、新潟駅南のホテル M館へは、6:30pm過ぎに入る事ができた。

元々、中条たち一行とは別に、大阪からの航空券にホテル、レンタカーがセットのプランを利用しているので、中条たちより先のチェック・インも可能だ。宿泊票と駐車票、姉の由香が、姉妹を代表し署名。フロント・ロビーで、先着した所持品を受け取り、上階の、アッパー・ツインへ。角部屋の、中条たちの泊まる大部屋「エグゼクティヴ」の隣だ。

由香が「いやいや、まあ順調で良かったな。帰りの、津川までの道が、ちと不安やったけど。尾登も、日出谷も好いとこやったし、今日は、全部当りや!」と、満足そうに言うと、由紀も「せやなぁ。行き帰り、どこも魅力あったよ~。朝昼のご飯も Gooやったし!」 「うんうん。まだ、今夜と明日もあるからな。先に、ざっとシャワー使おか。髪は、夕飯の後でいいな」 「うん、そうしよ!」荷物の収納も終わり、落ち着いた姉妹は、つるんでシャワーを使う。

「あのさ・・」由紀が言った。「うん、何よ?」由香が返すと、由紀は「ここの窓から JR新潟駅がバッチリ見えるのやけど、蒸機の列車って、7pm過ぎに着くのやったな」 由香「せや!確か、7:05pm位やなかったけ?」 「そっか、有難と。来たら又、動画撮らなあかんな」 「うんうん。こないな高い位置からなんて、滅多に撮れへんから、頑張りや!」 「了解、やりまっせ!準備は万端や!」生まれた時同様の、魅惑的な姿態で、姉妹は仲良くシャワーを済ませる。少しおいて・・

由香「ほな、由紀ちゃん・・」 由紀「はい・・」 「今の内にさ、ちと衣裳合せしとこか・・」 「うん、それ好いな!」 「昨日が、日本情緒の浴衣やったから、今夜は、例のコスの出番や。分るやろ?」 「ああ分る。男が見たら、大乱調になるアレや」 「せやせや。脚の方は、分るな。二ーハイやで」 「OK!コスは、確かフレア・ミニしか持って来んかったよな」 「うんうん。それでええやん。多分な、今夜のウチらのお相手は、中条の伯父様やろうから」 

由紀「そうか。やっぱし、大人のオッサンって、こう言うコス、好きなんかなぁ?」 由香「もうそんなん、訊かずもずがなやんか~!」 「ハハ、そうか。まあ、大人の以前に、男やもんなぁ!ショーツは・・ま、黙っとこっと!」 「分っとるんやったら、訊かんでもええやろ~!」終いには、二人で笑った。そうこうする内に「お姉ちゃん、来たで!」叫んだ由紀が、窓際に出、動画撮りを始める。7pm過ぎ、夜の装いの街に、蒸機の列車が、堂々と姿を現した。中条たち四人が、続いて上がって来る。7:30pmからの夕食は、ほぼ予定通り始められそうだ。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 紺野ひかる
葉加瀬太郎さんの今回楽曲 インヴィテーション(invitations 鳥山雄司さんとの共演 下記タイトルです)
Invitations

蒸機 C57 「SLばんえつ物語」走行動画(引用) 下記ナンバーのクリック又はタップで ご覧になれます。
C57180/5


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