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交感旅情 第49話「帰途」

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少し慌ただしい、旅の終盤となった。日本海岸・笹川流れ近くの保養所で、事を果たした一行六人は、車で 元来た道を引き返す。もう11am近く。ほぼ海沿いの R345を、25分程南下した所が、日本海東北道の 神林岩船港(かみばやし・いわふねこう)IC。ここから入って、30分程新潟方面へ戻った所が、豊栄(とよさか)SA。一行はここのフード・コートで、今回の旅 最後の昼食に臨んだ。

「皆、最後に急がせた様で、悪かったな」中条が言う。「い~え~、そんなん気にしまへん。あたしたちは、最後に日本海の名勝が見られて、良かった思てますよ」由香・由紀の木下姉妹が、笑顔で返す。「あたしも同感です。そんなに無理って訳でもなかったしね」宙(そら)が姉妹に同意し、周(あまね)も「自分も、これで良かったと思いますよ。昨日までは、JR線の蒸機の撮影で無理言ってますから。そこは自分も、ちょっと悪かったかと・・」呟く様に言うと、初美が「ううん、周君も気にしなくていいの。皆、それぞれに観たいものやしたい事を、一応は叶えたんだからね。それに、全員で、高め合う事もできたし・・」微笑んで締め括った。他の面々も、笑顔で応じた。

そうこうする内に、全員一致で注文した料理がやって来る。人数分の、数種類の具が載る海鮮丼と 吸い物、後 海草サラダが 二人一皿。食事時間は 40分弱。「もし、又来る機会あれば、もう少し海沿いの行程に、時間をかけねぇとな・・」食しながら 時折個別の会話に興じる一行を見回して、中条はそう呟いた。朝方曇りだった天候は、かなり回復して来ている。

午後に入った 12:20pm過ぎ、六人は車に戻り、新潟市中心部へ向け、再び走り出す。実は中条、朝の出発時に、姉妹に荷物を積んでおく様 勧告をしていた。空港への道が、万一にも渋滞などした場合でも、確実に 帰りの飛行機に間に合わせる為だ。小柄なトヨタ・シエンタは、流石(さすが)に六人乗車だと、ゆったりとは行かなかったが、姉妹の荷物は、二列目シートの片隅と、後端の小さな空間に、どうやら収まったのだった。

「由香ちゃん・・」ステアリングを操る中条が、声をかけた。「はい・・」彼女が返すと「朝来た通り、新潟亀田ICで降りて、R7を中心部へ向かう。そして JR新潟駅近くの GSで、最後の給油をするつもりだ。そこから駅までは 歩いても知れてるから、名残り惜しいが そこで解散にしようやんか・・」 由香が「ああ、それがよろしですね。そこから空港までの道って、分り易いかしら?」と訊くと、男は「うん。まあ分り易いから、ざっと説明しとくよ」

そして続けた。「GSを左に出て、最初の大きな交差点が、東大通(ひがしおおどおり)な。それを右折して、万代橋(ばんだいばし)の方へ向かうと、次の大きな交差点を もう一回右折で R113に入れるんだ。つまり、初日に行き来した道な。そこからは、この国道の道なりで 空港まで行ける。時間にして、順調なら12~13分ってとこだな」 「おおきに・・有難うございます!まあ迷わなさそうで安心やわ。あ、そや!給油の時、GSの方にも訊いときますわ」 「ああ、それがいい・・」自動車道を降りた、新潟市中心部への道程も、概ね順調で、12:40pm頃、車は、中条の探しておいた 国道沿いの GSで、給油に臨む。

「由香ちゃんに由紀ちゃん、今日まで有難うね。楽しかったわ!」まず、車を降りた初美が、挨拶の声をかけた。「あたしたちも、世話になったわ。お帰りも、気をつけてね!」宙と周も、下車し続く。三人に、姉妹が挨拶を返すのをも見ていた中条が「それじゃ、駅へ行く三人は、ボツボツと歩いて行く様にしてくれ。俺は、会計が済んだら追っかけるからさ・・」と、ゆっくり JR新潟駅へ向かう様促す。

「分りました。では・・」初美と宙、周の三人は、一旦歩き出すも、GSから国道に繋がるアプローチの端で、姉妹が給油を終え、発って来るのを待つ風情。「有難うございました!」完了した、満タン給油の会計を終えた中条は、乗り込んだ姉妹に向け、挨拶した。「今日まで、ご苦労やった!俺たちも、世話になった!帰りも飛行機って事だから、気をつけてな!」 対する姉妹は「こちらこそ、おおきに。色々有難うございました!ホンマ、楽しかったです。皆さんも、お気をつけて!」そして、正に車が発進しかけたその時、助手席の由紀が 声をかけた。

「伯父様・・」 「はい、何かいな?」 「この旅の続きがあると、良いわね!」妹は、笑いながらそう言った。対する男は「ハハ、まあ、叶う様に努力しようや。お互いに!」と、笑い返した。彼、そして、国道脇の歩道で見守る三人が会釈、短い警音(クラクション)の一声を残し、軽めの答礼と共に 姉妹の車は国道へと進む。黄色の車体が、中心部へと進む車列と 街並みに紛れ込み、見えなくなって行った。四人は、車影が視界から消え去るまで見送った。1pmまで、後 十分弱と言う所だった。

「さあ、俺たちも行くか・・」 「ええ・・」 「はい・・」残った四人は、JR新潟駅へ向け、歩き出した。北側の万代口は、ゆっくり目でも数分程の距離だ。一旦、反対側の南口 前夜泊のホテルへ戻り、預かり荷物をそれぞれの手に戻す。そこから、上越新幹線乗り場までは、もう至近。上りエスカレーターで、プラット・フォームへ赴くと、出発の 10分前。前世紀末から、20年近く頑張って、もうすぐ後進に道を譲って消える E2系編成の列車「とき322号」の乗車扱いが始まっている。

「或いは、この車種の乗り納め・・か」四人は、編成の後半 普通指定席に収まる。全国の新幹線の標準、3+2の横五列で、折角の機会なので、座席(シート)を向い合せにして、東京までの 約二時間を過ごす談笑に備える。「この線の道中も、山が魅力だぞ」中条が言った。「ああ、確か 川端康成の、有名な小説の舞台よね。上越国境って言うのかしら?」初美が応じ。中条は「はい、初ちゃん正解!その通りやよ」と返す。

1:20pmになろうとする頃、上り「とき322号」は、静かに新潟を離れた。ものの数分で市街地を抜けると、越後平野の 広大な田園が続く。「好い感じだな。この土地の 米と酒が、他所と別格ってのが、何となく分る光景だよ」中条が言うと、周「別格・・ですか。何となく分りますね」と返し、女たちも「ホント、色んな条件に恵まれてるって感じだわ」と応じ。

駆け抜ける田園の彼方に、名残惜しそうに 雪を頂く飯豊連山が見える。「あれ、一昨日と昨日見た、綺麗な雪山かしらね」そう言う宙に「ああ、そうだね。こういうゆったりしたとこから見るのも、又いいな」周も合せる。初美と中条も「この辺と、東北辺りは、ホントに山が綺麗なんだよね。これ見るだけでも、来た甲斐があるってもんで。由香ちゃんと由紀ちゃんも、そう言ってたな。・・で、彼女たちも、もう飛び立ってるね」と静かに言い合った。

小半時で、戦前海軍の名将 山本五十六(やまもと・いそろく)の故郷でも知られる長岡を過ぎると、沿線は、次第に山間へと様相を変えて行く。更に半時程走った、スキーや温泉などで知られる 冬のリゾート地 越後湯沢が近づくと、前述の小説でも知られた、谷川岳を主峰とする、秀峰の群れが臨めるのだ。

「あは、こっちの雪山も、素敵・・」宙は、心より感嘆している様だ。「確かにな。今度の旅は、綺麗な雪山がよく観られるね。だけど・・」周の言葉に、彼女は「だけど、何・・?」と訊いた。周は「東京から、地元へ帰るまでに、霊峰富士があるからねえ」と返した。

中条はこれを聞いて「・・だよなあ。やっぱり圧巻は、富士だって!」笑いながら言う。初美も「そうよ。やっぱり、富士山が一番!今日は、観られるかしらね。楽しみだわ」と応じ。全員一致で、飯豊(いいで)も谷川も魅力あるも、富士はやはり格上と言う事になった。越後湯沢の辺りからは、度々長いトンネルが現れた。

更に暫くすると、日本一広い関東平野へ抜け、高崎。乗客数も、心なしか増える様だ。「大声じゃ言えねぇが・・」中条が切り出した。「面白そうですね。聞きましょう」周が、興味ありげに返す。それを見て、男は続ける。「ちょっと前まで、東海道新幹線も、上越新幹線も、小人数用の個室があったんだよな。今はねえのが、ちと残念だが・・」「あは、個室ですか。それって、四人部屋もあったんですか?」今度は、宙が反応した。

中条は、更に続けた。「そう、今の感覚じゃ理解し難いだろうが、平成の初め頃はさ、そんな夢みてぇな設備もあったんだ。勿論、四人部屋もな」聞いた宙「ふふ・・そしたら、お部屋貸し切りで、秘密の事もできたのよね」と言い、聞いた男も「ハハ、まあできん事もなかった・・かな。尤(もっと)も、それをするなら、壁が薄くて『あの時の声』がよく聞こえるから、息を殺して、静かにやらなきゃなあ」と、苦笑交じりで応じる。

高崎から小一時間、とりとめもない会話も半ばで、列車はもう、東京都内。「さて、旅の最後に、何食いたい?」今回の旅 最後の乗換え駅 東京に着いた四人は、地元N市までの、東海道新幹線の車中で夕食とするべく、駅弁やデリカ、飲料などの買い物に興じる。連休谷間の平日とは言え、休日と大差ない賑わいが、一行に 首都である事を告げている様だ。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 美咲 唯
葉加瀬太郎さんの今回楽曲「マイ・ホームタウン(My Hometown)」下記タイトルです。
My Hometown


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