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想いでの山峡(やまかい)~林間学級の秘密 第26話「一路」

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8月2日の日曜。前日以上に晴れて暑くなった。「草サッカー練習試合、昨日で良かったなあ」昼頃落ち合った、健(たける)、徹の二少年は、口々にそう話したものだった。

「ご馳走様でした!」健の伯父、中条(なかじょう)の奢(おご)りで、好物の昼餉(ひるげ)をたっぷりと食した二少年。大学生の延長の様な中条の居所で、気になるプロ野球 NCドラゴンズの試合をラジオで聞きながら、暫し林間学級の話をする事に。この日、同球団は首都圏遠征中。地元の王者と言われる、YTジャイアンツとの対戦が組まれていた。二少年が、中条の所を訪れる楽しみは、彼の話もさる事ながら、秘かに集める18禁雑誌やビデオ媒体などを盗み見できる事も、あるにはあったが。

中条が言った。「まあ、飲んだりして涼みながら、話そうぜよ」少年たちには、某高級アイス・クリームとコカ・コーラを振る舞い、自らは微糖のアイス・コーヒーを嗜む。勿論、某マンション7F南東にある、彼の居所の空調はフル運転だ。

中条「お前たちの、林間学級での夜のあり様そのものは、俺はとやかく言わん。形はどうあれ、男女の交わりってのは、なり行きで深くなっちまう事もあるもんだ。ただ、お前たちの場合、齢(とし)がちと早過ぎた。そこから、もう近い内に終わらせんと拙い。そしてその事を、研修寮の中だけにするって事。注意すべきは、その二点だな」

健「伯父さんの話は、大体分る。確かに、初等科で女の先生とあんな仲になるなんて、普通はあり得ないよね。それと、林間学級の終わりが7日金曜だから、それまでにきっちり終わりにしないとって事ですね」
中条「まあ、そう言う理解でいいだろう。それでな、俺がちと引っかかった事を話しておきてえんだ。これは、徹君にも関係あるから、良く聞いておいて欲しいんだ」 徹「かしこまりました。伯父さんのお話は、よく気に留めておきますから」

中条「健、お前本当によく言ってくれたと思うんだが、昨日の夕方、小町先生に電話で声をかけられたんだってな。親元の用事と重なったって事で、お会いするの断ったそうだが、これが大事な分かれ目だと思うんだ。明日からの林間学級の終わり頃で、又お会いするそうだが、これ、好い機会(チャンス)じゃね?お前たちは、話の雰囲気からしてある意味、初美先生に気に入られ過ぎてる所がある様だが、そこへ小町先生に、上手い具合に入り込んでもらえると好いなあと思う訳よ」
彼はつまり、初美の、二少年への(性的な所を含む)過剰な関心を、小町が関わる事により、何とか分散できると良い、この様に考えたのであった。
健「そうだねえ。初美先生は、確かにそんな所がある様な。だから、四日前の夜なんかは『もう、したらいかん』て想いもふっとしたんだよね。徹はどう思う?」
徹「はい伯父さん、そして健。俺も、大体同じ様な感じがしてるんです。そろそろかなって」
中条「お前たち、それ分るよ。だけどさ、本当は『したくねえけど、してえ』って想いが、心のどこかにあるんじゃね?それが本音じゃね?」
「ですねえ・・」二少年は呟いた。流石(さすが)は人生のヴェテラン。離婚して、今は家族がいないとは言え、中条は、見事に少年たちの、心の深奥を察している様だった。

健「できるだけ、あの女性(ひと)の気を悪くしない出方で、遠ざかる様にしたいけど、いざとなったら、小町先生に、間に入って下さる様お願いする。それが、最後の手段って事だね」「そうだな。だけど、お前たちの方でも、林間学級が終わるまでに、初美先生の、その辺の所から段々とお暇(いとま)する。そう言う心がけをするべきだな。これ、徹君も同じな」中条は、こう返す。

徹「伯父さん、有難うございます。よく分ります」 中条は更に「聞く所、初美先生はお前たちの恩師だけど、同時に、年上の彼女って捉え方はできねえかな?そうであるなら、あの女性(ひと)にもしもの事あれば、命懸けで守るのが、男の務めだろう。健、お前は一人じゃねえ。徹君と言う、無二の親友がいる。脅す訳じゃねえが、二人で当たれば、できそうな事だと思うぞ。どうだ?」

健「伯父さん、好い事を教えてくれた。感謝です。俺も今、同じ事を考えていたんだよ。そうだね、あの女性(ひと)は、俺たちの年上の彼女だ。俺たちの友情と同じ位大事な女性(ひと)。そう思わないと。なあ徹」
徹「勿論。俺も、お前の友情からも、あの女性(ひと)の愛からも逃げないよ」 健「ああ、頑張ろうな。伯父さんも有難う」
徹「有難うございます」 中条「二人共、分りゃ好いんだ。さあ、試合をゆっくり楽しもうぜよ。ドラゴンズ、優勢みてえだな」
話を終えた三人、ラジオ中継に聞き入り、時折野球談議を交わした。

同じ頃、前夜大いに酔って、遅い朝を迎えた香緒里と、つき合わされる形となった初美。健の家からも近い、近所の馴染みの喫茶店で、朝食兼昼食を摂る傍ら、翌日の、林間学級への戻りの時刻と今後の日程などにつき、少し話して昼頃別れる。留守中できない、居所の雑事をメインにこなし、夕方前、FMラジオを聴きながらアイス・ティーを嗜み、暫し休憩。

前日の事だが、徹の親元より連絡を受け、彼の態度が大きく改善、相手と目線を合わせて会話ができる様になった事などを、大いに称えられた。大変光栄なのだが、それだけに、もう一つの想いが募るのも事実だった。「彼たちに会いたい、そして抱き取り、あの初々しい『少年自身』を、もう一度迎え入れたい。少し小ぶりの、程良いサイズ。しなやかさのある、程良い硬さ。そして・・繋がる時の、程良い感触。ああ、どれも、忘れられないものばかり」呟く彼女。広言できない「夜の補習」をどう終わらせるか、大まかな線を決めはしたが、詳細固めはまだだった。

翌 8月3日の月曜、午前9時半過ぎ、N市JR中央駅に、林間学級へと戻る四人が集まった。この朝は、中条が仕事の都合で見送りできず、徹の母親が、一行を送ってくれた。車は、香緒里と同じトヨタ・アルファードの色違いである。

午前10時、一行の乗る特急「ワイド・ビューしなの7号」は、山間の方を目指し、元来た、並行する線路を滑り出した。N市中心街と郊外の住宅地、県境の渓谷、F県下の田園を抜け、先月末日に乗り込んだ、同じ駅に降り立ったのが、11時過ぎ。

この出発前の車中、香緒里から、詫びを兼ねた日程変更の通知があった。「皆、申し訳ないけど、私は今日、親類宅へ直行しなきゃいけなくて、中山荘(ちゅうざんそう)には入れなくなったの。だから、今日予定の私の教科は、明日に延期します。本当にご免なさい」 初美と二少年「やむを得ないでしょう。ご親族の方、どうかお大事に。あたしたちは、早瀬さんにお願いするから大丈夫」出発の時、彼女は、早瀬管理人と連絡を取り、駅へ迎えに回ってもらう事に。

「早瀬さん、度々申し訳ないですね」「管理人さん、済みません。お世話かけます」初美も二少年も、早瀬夫妻に深い一礼。
「いいえ、無事に着いて良かったじゃないですか。お昼は用意したから大丈夫ですよ」早瀬夫妻は、あくまでも平常心で答える。

昼食後、二少年は、本当は木曽川へ遊びに行きたかったが、初美はこれを許さなかった。早瀬管理人も「なるべく、川の穏やかな今の内に、案内したいんですがねえ」と残念そうだ。だが「又明日、相談しましょう」と言う事で落ち着いた。
「二人、落ち着いたら、お昼寝しなさい。理由は分るわね」初美は、そう指図した。その笑顔、微かに薄気味悪さ漂う、美しい笑みだった。
健「着く早々、昼寝とは」 徹「何かおかしいな。・・待てよ。昼寝って事は」
健「まさか、今夜『補習』決行か?」 徹「あり得るな」二少年、午睡前に、一度深呼吸をするのであった。
(つづく 本稿はフィクションであります 2016=H28,8,6記)

今回の人物壁紙 前田かおり
渡辺貞夫さんの今回楽曲「ウェストサイド・ドライヴ(Westside Drive)」下記タイトルです。
Westside Drive
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