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情事の時刻表 第3話「痕跡」

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宮城、そして彼を送る永野と別れた中条は、勤務先トップの実妹夫婦から頼まれていた買い物を済ますと、そのまま車を交際相手 伊野初美(いの・はつみ)の居所へと走らせた。日中降りしきっていた雨も、少し弱まる気配を見せる。「悪い、待たせた!」 「いえ、大丈夫よ」少し遅れるも、彼女はそう気にしていない様だ。

「暫くだったな。夕飯どうする?」 「うん。久しぶりで内飲みしたいな」 「そか、分かった・・」大き目の肩バッグを携え、まだ薄目の上衣にゆったり目の長パンツ、ウォーキング履きという平装備の初美を助手席に迎え、ひとまず居所北方の商業施設(ショッピング・モール)へ。雨天のせいもあってか、普段の土曜日程には混雑していない。「良かったわね。こんな風じゃないかって思ったりしたのよ」 「おー、そうか。初ちゃんの勘、相変わらず冴えとるなー!」中条は、お世辞抜きで感銘を表した。

ワイン好きな初美に合わせたミート・ローフやスモーク・サーモン、セロリとかの野菜や果物が何種か、それに絶対落とせぬブルー・チーズなどなど。チーズと言えば勿論、中条好みのブラックペッパー・チーズも買った。赤ワイン「十勝トカップ」は、既に彼の手元にある。居所に着く頃には、雨脚はかなり弱まっていた。

初美が食材や飲み物の下準備などをする間に、中条が入浴の用意。湯が整うまでの半時程 居間(リヴィング)で TV番組などチェックしていると、窓外の斜め向かい 商家「松乃家」屋上に、あの「不埒者」が姿を現した。この「不埒」とは あくまで中条の視点なのだが、一般の視点からも一定はそうなのかも知れない。

「又・・欠伸(あくび)しやがって!」だらしない様子で口を開け、鉄筋コンクリ建物屋上で徘徊する犬を 男はこう罵った。その上で「宮城さん、『サンコ』に子が授かって良かった・・幸せかもなんて言ってたが、俺に言わせりゃ『これの何が幸せだ!?』て事だよ。いいか、その子の親父はこのバカ犬の『オマル』だぞ。こんな奴に犯され孕まされて、よくまあそんな呑気な事が言えるもんだ。彼も何かい・・『幸せ』の意味を取り違えとる様に思えてならんわ。所謂『倒錯』て奴さね!」

ブツブツとその様な事を、喚(わめ)き気味に呟いている所へ、夕食の下準備を区切った初美が顔出し。「新(しん)さん・・」の呼びかけに、中条「ああ悪い、気にせんでくれ。又あのアホが上に出て来て 芳しくねぇ『晒し』をしたもんでな・・」 「ふふ、それって『オマル君』の事かしら?」 「その通り!まあ見たってくれ。今もさっきからあのザマだ。あれでもうすぐ親父だっていうんだから、呆れるよな」 「でも、未だに『不発』の貴方と どっちが立派かって言えば、難しいわね」 「ああ、難しい・・な。まぁまぁ・・」と宥(なだ)め気味に返した中条だったが、今の「通い婚」状態に 彼女が痺れを切らしているらしい事も、薄々承知はしていた。

「もう、二年目になるかな・・」渋面を作る一方で、男は思い返していた。そう、前年の初夏 北隣の F県下の取引先都合で車での外出ができず、やむなく乗った JR中央西線・復路の列車が、偶然に二人を引き合わせたのだった。「あの時、車で往来してたら・・」の想いは、それは今でも 脳裏の片隅にあった。勤務先にあっても、経営陣の親族・・特に専務の実妹、陽乃(ひろの)からは「いつまでも『煮え切らん』ではあかんで!」と、糾されている折でもあった。

「初ちゃん、話の意味は分かるよ・・」中条は、少し湿っぽく反応した。「早くそうなる様に、俺も努めとる所だて。齢の事もあるし。しか~し!」 「しか~し!何なの?」初美が返すと、彼は「それにしても、ちょこっとで良い。焦らさんで欲しいって事だよ」 「その『ちょこっと』が曲者なのよね。まあつき合い出して二年目に入ったとこだしさ、もう少しだけ 時間あげてもそりゃ良いけどさ・・」 「ご理解有難と。恩に着ます。しか~し!」 「はい・・」 「俺は絶対、貴女から逃げやせん。これは確約するわ」 「分かった。まあ信じましょう。その姿勢を見たいんだけどさ・・」 「はい、何ぞ?」 「久しぶりで、お風呂一緒にしようよ」 「いいでしょう・・」

施錠を確かめ、脱衣し生まれたままの姿になると、初美と中条は浴室へ。少し時間を要する初美が 洗髪とボディ洗いの間に、中条はかけ湯の上 浴槽へ。「好い眺めだ・・」既に三十路を少し過ぎたとはいえ、初美の女体は 好ましい線を維持していた。際立って豊かではないが、好ましい形の 程好い中庸の「胸の双丘」。その頂に、これも程好い色づきの乳頭が聳える。腰上の縊(くび)れは 中条の好みの締り具合を見せ、その下は胸周りより少しだけ目立つ これも好ましいカーヴの臀丘だ。

「初ちゃん・・」男は、呟く様に声をかけた。「はい、何?」返事を得ると、一言「綺麗だね・・」 「有難う。でも何が?」 「何が・・か。そりゃ全部だよ!」男の語尾は、やや取ってつけた様な所があるも、女は素直に受け取った様だ。「どもども。貴方の心がけで、もっと綺麗になれるかもよ」 「ハハ、言うと思った。善処しやしょう!」暫くは、他愛もない会話が交わされる。

中条は続けた。「何年か前、週刊誌の記事で読んだんだが・・」 「はい、何?」 「新婚でさ、風呂場で『あの事』が好きな夫婦がおってな、入浴の折に何度か実行したんだが、やっぱり不具合があったんだって。何だか分かるよな・・」 聞いた初美は笑いながら「ふふ・・うんうん、分かる分かる。実行して燃え上がりゃ、あの好い喘ぎ声が 近隣にタダ漏れだもんね。結局それが、周りに筒抜けに聴こえちゃったんでしょ?」と応じた。

中条「初美先生・・」 「はい・・」 「その説明、お見事です!」 「ハハ、やっぱり。・・でその後、どうなったの?」 「その後はもう分かるだろうけど、そりゃもう不良な展開だよな。近隣で評判になっちゃってさ、はっきりした話じゃねぇけど 盗聴しようとした輩もいたらしいな。で 結局は転居しましたってさ」 「ふぅん、やっぱりね。場所はここみたいなマンションだったの?」 「そうだな、間取りこそ違え 似た感じの住まいだったらしいよ」 「ハハ、そりゃ NGだわ。お風呂でそんな事しちゃ、大きな音がして拙いって 分からなかったのかしらね?」 「それ、意外に難しいかも。だってその時、貴女の言う「燃え上がる」状況じゃ あれこれ考える余裕なんかねぇだろうし・・」浴槽の中と洗い場で、二人は目を合わせて笑った。

「所で・・」洗い終わった初美が言った。「ああ、分かるよ。『浴槽替われ』だろ?」中条が返すと 「それもだけど、ちょっと貴方に試したい事があるの。ちょっと堅いけど、ここに腹這いになって」と指図。「了解。あの事を試す気だな・・」呟きながら、男が応じた。それを見て女は、男の背後からボディ・ソープをその身体に塗り付けて行く。「ほう、泡姫ごっこかね。久しぶりだなぁ・・」中条、感慨深そうに反応す。「たまには、気分転換にもなって良いかなって・・」 「好いとこに気がついたな。その通りやよ」男は、女の機転を褒め称えた。

うつ伏せになった中条の背後に 初美が跨(またが)り、プロの風俗嬢にも劣らぬ、濃厚な泡踊りが披歴された。「初ちゃん、上手だ。続けてくれるか?」 「有難うね。誤解しないで欲しいけど、こんな技も、貴方だけに仕掛けるんだからね。これ、ネットで調べたら出て来たのよ」 「そうらしいな。風俗関係しか知らん様な、濃厚な技法も載っとるらしいし。しかし・・ああ、好い感じだ」背後からの愉悦に、男は暫し身を任せる事にした。

「新さん、所でね・・」初美が、言葉を継いだ。「はい、何ぞ?」彼が返すと 「お風呂もそうだけど、特に居間と寝室で感じたんだけどさ」 「はい・・」男の返事が、やや堅さを帯びた。初美「この夏終わってから、一度や二度 ここへ来たけど、どうもあたしの使うのとは違う香水の匂いがしたの。気のせいかしらね?」 「ああ、いや。あれから一度は本荘(小町)先生も覗きに来られてるし。勿論昼間な。俺、それ以外は 特に覚えはないんだが・・」中条は、とぼけた様に返した。

初美、更に続けた。「新さんは、あたしの使う香水が C社の〇番だっての、知ってるでしょ。当たり前だけど、ブランドによって、香り方が微妙に違うのよね。・・で、因みに ここの居間や寝室で感じたのは B社の※番って種類なの。これ確か、小町先生の使われてるのとも違うのよね」 「ああ、それな・・」初美の話を聞きながら、ようやく気持ちが整理できた中条は、言葉を返した。

「この夏、大坂にいる T&K建装の 木下さんちの由香ちゃんと由紀ちゃん姉妹が、この辺へ来た挨拶兼ねて 二度位立ち寄ったんだ。勿論、した事は『茶話会』程度な。一度だけは食事もした。その事は、同席した Sタクシーの永(なが)ちゃんも知ってるよ。まあ、香水ってのは 座っただけで香りが乗り移る事もあるらしいから、それは俺の注意が足りなんだかも知れん。許せ」

初美「仕様がないわね。まあ、その申告通りと理解しておくわ。所で新さん、下の『男』は、ちゃんと熱くなってくれてるかしら?」 中条「そりゃ勿論。もうどうか・・制御(コントロール)が怪しくなる位ぇのレベルでね。でも、さっきの新婚さんの真似はいかん。ちゃんと風呂上がって一発・・じゃなかった失礼!一杯やってからの話って事だよ」 「ふふ・・そうよね。もう十代とかの若造とは違うんだからさ、新さんはその位の抑えは利くと思ったのよ」 「分かってくれて、有難う。あ・・マッサージもな。俺、先に上がって酒食の用意してっから、ゆっくりお入りよ」 「有難う・・でも」返事をしつつ、初美は呟く。「まだまだよ。もう少し追及するわ。貴方の弱い『挑発』かたがたね・・」
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 裕木まゆ
今回の「音」リンク「帰らざる日々(The Begone Days)」 by久石 譲(下記タイトル)
The Begone Days
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