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情事の時刻表 第26話「交信」

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「中条さんご機嫌よう。本荘小町です」 「小町先生、ご連絡感謝です。確かご出張・・ですよね」 「まあ、そんなとこよ。所で、貴方もこちらへ向かってるんでしょ?」 「参ったなあ!ご存知でしたか?」訝(いぶか)りたくなったのも、無理はなかった。中条は、小町と豊(ゆたか)を追って 彼の故郷・北紀町に入る事を、自らは一言も伝えていなかったからだ。

「多分、豊君か 看護師の瀬野美波(せの・みなみ)さん・・どっちかから先生に伝わったんだろ。が、そんな事ぁ良い」小町の電文(メッセージ)を流し見ながら 彼は呟く。続いて送信があった。「・・でね、中条さん」 「はい、読んでますよ」 「本当の所、もうすぐ北紀長島駅に着くんでしょ?」 「はい、その通り!」 

小町の電文は続く。「そしたら、宿入る前に、ちょっと北紀中央病院へ回って欲しいの。たった今、迎えの車を長島駅へ向かわせた所よ。そんなに時間は取らないわ。ほんのちょっと、今日の内に貴方と会って話しておきたい事があってさ。その代わり、済み次第宿まで送らせるから」 「有難うごぜぇます。そういう事なら伺います。所で先生・・」

小町「はい、何かしら?」 「実はね、この行程 初美も来てるんですが、それはよろしいかな?」 「何も問題ありません。むしろ、彼女も一緒の方が好都合かもね。直ぐに会うのは分かってるけど、宜しく伝えてくれるかしら?」 「了解しやした。そいじゃ、後程宜しくお願いします!」 「こちらこそ!」交信ここまで。

「初ちゃん・・」中条は呟いた。「はい・・」返事を得ると 「小町先生、どうも前もって俺たちが北紀町へ入るの 知ってたみてぇでな。駅に着いたら、一度病院へ寄ってくれだと。隠しても仕様がねぇから、貴女も来てるって事ぁ伝えといた」 「分かった。そういう事なら、あたしも顔出すわ・・」そう返した初美だったが、やはり 表情は余り浮かぬ雰囲気だ。

「悪いな・・」中条がそう声をかけたのと「間もなく、北紀長島に到着致します。お降りのお客様、どうかお忘れ物等ございません様 お仕度をお願い致します」の放送告知がほぼ同時。地方の鉄道線ではまだ少数と思われる、女性車掌の声だった。「いや~好い声だ。これから、こういう路線も増えると良いな~!」中条が言うと 「ふふ、本音が出たわね。多分、そうなるわよ!」初美も、笑って合わせた。

3pm少し過ぎ、北紀長島着。こちらも、ほぼ時刻表通りだ。もう今は少数となった 駅員のいる改札出口を抜けると、北紀中央病院のロゴを纏(まと)った アイボリー・カラーのトヨタ・ハイエースが控えていた。「お~、よろしな~!美人さんの運転かよ~!」

思わず浮つく中条を、初美が肘鉄で制す。「お疲れ様です!中央病院の瀬野です」 「お世話様です。中条です」「初めまして。伊野初美と言います。ちょっと前まで、佐分利学院におりまして」「あぁ、伊野先生・・その節は 豊野 豊がお世話になりまして!」そんな会釈を経て、中程の二列目に、二人が乗り込み 発車。

JR北紀長島駅から、中央病院までは 車ならほんの数分である。漁師町故、旧病棟の頃は港の傍らに在ったものが、数年前の東日本大震災に伴う津波被害などもあって、近年竣成の新病棟は 高台に移されている。建物も、鉄筋コンクリ EV装備の地上 6F、地下 2Fである。

この道中、中条は 運転の女に少しばかり尋ねた。「失礼を承知ですがね・・」 「はい・・」 「もしかして、瀬野美波さん?」 「はい、左様です」 「有難うです。貴女のお話は、甥の上級生の 豊野 豊君からちらっと聞いてましてね」 「ああ、豊ね。中条さんにもすっかりお世話になってる様で、ホントに有難うございます」 「いえいえ、余り良い見本とは言えんとこもありまして、まだまだ努力の余地はあるかな、な~んて思ったりもしてましてね」 二言三言の会話が済むか済まぬかの内に、車は病院構内へ。

東日本の震災があって間もなく 建物を更新した北紀中央病院は、大都市部の総合病院より二回り三回り小柄な他は 設備面は引けをとらぬ高水準(ハイ・グレード)な佇まいだ。漁師町とはいえ、海山の名産の売り込みが奏功して財政面はまず恵まれ、病院に代表される公共施設も、総じて一定レベルの高さを誇る所が多い。勿論、国からの補助金も相当額に上る事だろうが。

「いやいや、ご立派な病院じゃねぇですか」中条は、本気で感心して美波に言った。「有難うございます。あたしたちは、ここを北紀地区の拠点病院にすべく 努力中でして。ご存じの様に 漁業に携わる方々も多いですし、遠くにあっても 少しでも健康面の不安材料を取り除く様にしないとって事で、新しい医療技術とも向き合えればとも考えてる所ですの」

中条「なる程ね。近頃は、都市や地方に関係なくお医者さんが不足してるらしいから、そこは国レベルで対応や手当てをしてもらわんと、現場がますます大変になっちまって 大変な間違いとかが起きかねねぇからなぁ・・」「ホント、そうですよ。中条さんは そうしたとこもお分かりみたいだから、こうしてお話してても、何か元気が頂ける気がしますわ」「そいつは有難てぇ。俺みてぇなモンの言葉でも、病院の方々を元気づけられるって事たぁ ちと自信になりまして・・」会話は途中から、病院ロビーのソファー上に移った。

ロビーには飲料のサーバーや自販機が設けられ、日本茶と冷水はフリーである。それを合間に飲みながら 10分程話した所で「お・待・た・せ・・」束の間 手を開けた小町が現れた。診察をしない日でもあってか、濃色のスーツ上下で 下方は隙のない印象のロング・パンツで固めている。「どうも、お疲れ様です!」初美と中条は、腰を浮かして挨拶した。

「中条さん、当院へようこそ。中々忙しくて、海原(うなばら)眺めて一休みって目論見は、上手く行きそうにないわ」「ああ、そりゃ大変だ。休診の日でも、何かとやる事があるでしょうし・・」中条は、そう返しながら 美波の持って来た日本茶の紙カップを 対面に席を取った小町に回した。初美は聞き役に徹している。「有難う。それでね・・」「はい・・」「折角 こちらまで出て来てくれた事だし、美波に一日位 貴方たちの相手をしてもらうつもりって事よ」

中条はこれを聞いて、内心に「!」の信号が灯った様に感じた。「これは、ひょっとすると・・」或いは、美波と深い「行為」に及ぶ機会を持てるかも知れぬ。そう、この少し前 夏の終わりに学生時分の先輩 宮城にふと漏らしたあの言葉「美波恋しや ほうやれほ」が現実になるかも知れぬ所まで来ているのだ。勿論今回は 大本命の初美も同行しており 露骨な事はできない。だから その願望を叶えるのは、当然リスクを負う必要もあろう。

「それでね、中条さん・・」小町は続けた。「聞きましょう。どうぞ」男が返すと 「貴方にはちょいと辛いかもだけど・・」「ああ、いや・・隠さんと教えて下さい。俺も男だ。何とかしますよ」「分かった。じゃあ、これからちょっと教えるわ。初美は 今はちょっとご免ね。必ず後で教えるから・・」「分かった。必ず宜しくね」頷きながらの 初美の返事を確かめて、女医は男に耳打ちを始めた。「そ・れ・は・ね・・」
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 初川みなみ
今回の「音」リンク 「リベルタンゴ(Libertango)」 by葉加瀬太郎(下記タイトル)
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