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レディオ・アンカーの幻影 第16話「巡行」

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暮れの遅い初夏の陸橋の北方から、二条の尖光が発せられる。それは次第に列車の先頭の形相を整え、重い、しかしはっきりした鉄の足音を伴って迫って来た。デジカメのファインダーで迎える前嶋と、傍らで見守る由香利の眼前を、JR中央西線石油専用貨物便、第 8885列車は二頭立て重連の電気機関車を先頭に、20両近い油槽車(タンカー)を伴って 轟然と通過して行った。

「有難うございます。曇ってて良かった・・」の一言に続き 「晴れだと光線が逆向きになって、具合が悪いんです。それと、今日のここは まぁ静かな方ですよ」使い終わったデジカメを収めた前嶋は、由香利に軽く一礼しながら言った。「そうですか。乗り物の写真もアングルで苦労する訳ね。すると何人かお越しの事があるの?」の返事を得ると、彼は続けた。

「そうですね。趣味の方では一般の女性の方に マニアックな話はせん方が良いんですが」 「はい・・」 「あの列車を含めた 中央西線の貨物便は、旧国鉄期からの機関車が今も元気にやってるので人気なんです。時によっちゃ、ここも大賑わいでして・・」 「なる程ね。JRに代わってからもう 30年以上だから、それは希少価値があるのね」 「まあ、一つにはそういう事ですね」微笑みながら、前嶋は返す。こうした由香利とのやり取りにも、少しでも余裕を以てしたかったのだ。

末前陸橋から東へ、金盛副都心の中心部へ向けて歩き出すと、少しおいて前嶋が言った。「どうしましょう。まだ夕食には少し間がありますよね」 「うんうん。その通りね。それでね・・」と由香利。「はい、聞きましょう」と続きを促すと 「実はね、この近所に 私の入ってるテニス同好会の隠れ家があるの。昨日と今日は、そこが宿よ」 前嶋「あぁ、そうなんですか。それ聞くと、ここ数年この辺りも、高層マンションって結構増えてるんですよね。そうか、そんな使い方もあり・・か」

R19を跨ぎ、JR東海道線と中央西線、それに名豊電鉄本線の三路線が並走する幾条もの鉄道線路を右下に見る長い歩道橋を渡り、二人は金盛総合駅正面を過ぎて更に数分程南下した辺りに、近年建った 15F位の高層マンション群が複数ある。N市中央駅から南下してきた JR中央西線は、金盛を発つと並行していた東海道線や名豊電鉄本線と別れ、かなり急な左カーヴを描いて G県の山間へと続く北東へと進路を変える。

そのカーヴの内側に建つ一棟の上階に、由香利が私的に加わるテニス同好会員向けの隠れ家があった。名目は合宿所だが、そこはマンションの一室。上質な 2LDKは居住性も良好で、勿論浴室や空調、家具一式など不足のない構成となっていた。同好会の本部は東京で、会員は予約制で利用できた。由香利の話ではここに三室あり、満室となる日もある様だが、この日は彼女と前嶋だけの様だった。

由香利は言った。「まぁ、ホテルに入っても良いんだけど・・」 「ですが、やはり目立つって事ですか?」聞いた前嶋が返して来た。「うん、まぁそれもあるわね。でも、何かこっちの方が気楽でね。私は仕事柄 他の都市にも出かける事あるけど、関西辺りも 部屋のある所は使う事が多いわね」 「そうですか。やはり富裕な方が多いんですか」 「正直そうね。まぁ『中』の上から上の層が主かしら。セレブと呼ばれる向きも結構いるわね。さぁのぞみさん、夕食前に、ちょっと相手して下さる?」 「了解しました。俺、余り『はい、喜んで!』なんて言えるレベルじゃないですが、良いんですか?」 「勿論!上手下手じゃなくて、気分転換が主だからね」

「そうか、気分転換・・」 上階の部屋に通された前嶋は、夜の部がある場合を想定して、背負って来たバック・パックにトレーナー上下を忍ばせていた。断ってもう一つの空き部屋で着替え。この棟の地階には、練習用テニス・コートがあるのだ。「もしかして彼女、例のミニコスでするつもりかな?」なる秘かな期待も、前嶋の脳裏を過った。さすれば、まだ想像の中だけにある由香利の美脚が直に拝める機会(チャンス)もある。が、この夕方はその期待通りには行かなかった。

この時の練習着は、由香利もノーマルな深紅基調のトレーナー上下。前嶋のは緑系である。「あは残念・・そりゃそうだわな。明るい内から、そんなに調子良く行く訳ないか・・」 照明の入った地階のコートにて、小一時間の練習試合に興じる二人だった。由香利のサーヴで口火が切られ、彼女の繰り出すラケットの打力は思いの他強く、相手の前嶋はしばしば翻弄される事に。「いや意外!ここはどうだろ。少しは本気で負けん気を出した方が良い・・なんてな」 途中から「負けるが勝ち」の思考を修正、由香利の攻勢に食い下がる姿勢を見せると、形成は多少は縮まった。

「有難うございます。お見事でした!」 「貴方もよ。お疲れサマー!」僅差で由香利の勝ち。心地よい汗を軽く流すと、前嶋はわざとシャワーを使わずに平装に戻り「どうでしょう。このまま生ビール飲みに行きたいですね」と持ち掛けた。同じく衣服を戻した由香利も「それ良いわねぇ!」と賛同してくれた。金盛副都心からやや外れた 勤務先の連中からは知られない所に、前嶋お気に入りの和食処があった。彼はまずそこへ、由香利を案内した。

「俺、鰹が好物なんです。今は丁度、初鰹の時期でして・・」最初にやって来た 生ビール中ジョッキで乾杯すると、前嶋が切り出した。「あぁ初鰹ね。私も好感よ。造りとかたたきが多いけど、貴方もそう?」 「いかにも!」で、鰹メインの海鮮が数種と、海藻サラダや枝豆、揚げ物などが卓に上り、飲む方は生ビールから冷酒へと流れたが、美酒に身を任せる訳には行かない前嶋であった。「美味い!しかし深酒はいかん。これ、由香利さんも同じだ・・」

酒食の席でよくある 互いの仕事や勤務先の事共、それに趣味の云々などを一渡り語った末、前嶋は由香利に言った。「余り遅くならない方が良いですね」 「うん。でももう一か所位なら良いわよ」の返事を得ると、2H程で夕食を切り上げ、勘定を経た前嶋は、これも副都心から少し離れた 馴染みの喫茶室へと案内した。ここはちょっとネット・カフェ風の趣があり、静かなジャズ中心の BGMと共に、各席の仕切りがやや高く、一応のプライヴァシーとネット環境が整っているので 好感していたのだ。

8:30pmを少し過ぎ、この手の店舗は混雑しがちな時間帯だが意外に静か。30席程の薄暗い店内は、半分弱位の入りだった。「ふふ、どうかしら。少し濃いお話ができそうな感じね」 食後のアイス・ウィンナーを嗜みながら、廻った酔いを覚ます事にした。「ホント、これなら前戯位できそうだな。濃いお話・・同意です」と、前嶋も理解した。

少しの雑談の後、由香利が言った。「のぞみさん、さっきの練習に付き合って下さり感謝です。でも・・」 「はい・・やっぱり俺、力不足でしたから。やはり何かあったんですかね?」 「うん、大した事じゃないけど、少し一緒に復習したいのよ。だからこの後、もう一度お部屋寄って下さらないかなぁ?」 「あぁ、そりゃ構いませんよ。お部屋に自分の荷物もお預けしてるし・・」 「尚可だわ。もう少ししたら、行きましょうか」 「あぁそれ、賛成です・・」こう交わした後、どちらからともなく擦り寄り、唇を重ねていた。

「ご免なさい。初め予想してなかったけど、出過ぎた・・かな?」前嶋が呟くと、由香利「今更謝るなんて野暮よ。こうなったらそっちも復習ね」と微笑んで言った。追い込まれた風情の前嶋は、ただ「宜しくお願いします」と返すのがやっとだった。喫茶室で 1H程過ごした後、由香利の隠れ家へ。

「先にシャワー使うけど、良いかな?」 「どうぞどうぞ!」そう返し、由香利を先行させる前嶋の脳裏は、不良な想像に支配されていた。勿論浴室での由香利の姿態の事だ。「多分アスリートの体型。脚は特にだが、まぁ全身魅力有だろう。この後の復習って、ひょっとしてそれが拝めるのかな?」 こう考えると 又また自慰への衝動が突き上げるのだが、この夜は辛うじて止めた。更に良い可能性だってあるではないか。やがて「お先に!」の朗らかな一声に応じて前嶋がシャワー室へ。洗髪を含め手早く済ませ、バス・ローブを纏って居間に戻ると、予想外の光景を見る事となる彼だが、それは又次回・・
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 三上悠亜
日野皓正さんの今回楽曲「スティル・ビバップ(Still Be Bop)下記タイトルです。
Still Be Bop
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