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轍(わだち)~それから 第2話「問診」

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女医でもある佐分利学院の養護主任 本荘小町(ほんじょう・こまち)の事は、今までも何度か触れて来た。

年齢は三十代前半。東北地方は某県某所の出身。首都圏の某私大卒。身長160cm強、体重50kg弱で、3サイズは B85cm、W59cm、H86cm位、ブラ٠カップはDと言う所か。髪は黒のロングで、肩下15cm位の長さだろうか。普段は勿論、後ろで纏める格好だ。白衣着用が多くてよくは分らないものの、相当な美脚の様だ。
医師、養護教諭の両免許を保持してはいるが、学院の養護課は、学校教育法の適用を受けないので、授業時間中に常駐しなければならない訳ではない。その為、彼女は週二回、火曜日と金曜日に、学院から近い鵜方病院で、内科、小児科の診療もしていた。つまり、同病院の非常勤医師でもあるのだ。

佐分利学院の学級は、朝方から午後途中までが、主に高卒浪人の受験向けと、小規模だが中卒浪人と、現役を退いた中高年メインの社会人向け学級もある。学院教科の中心となる、小・中・高校生の受験向け講座は午後4時頃から二~四限位。夜間に、社会人向けメインの学級も設けられている。公立学校が休みの土曜は、勿論小・中・高生向けの教科が午前から組まれる。

講師たちはほぼ二交代で、午前からの高卒浪人向け学級などの担任は早朝から夕方前まで。小・中・高生教科の場合は、昼前後から午後9時の、その日の終講後暫くまでと言う勤務形態で、概ね午前7時から午後10時位まで、入れ替わりで多くの生徒や講師たちで賑わっている感じであった。

その様な中にあって、養護主任 小町の一日は、大体午前8時半頃起床して朝食、その席で朝刊に目を通して10時半頃から登院。午後1時頃からの授業開始を見届けて、小一時間の昼食。手当などで最も忙しい夕方前後は、基本 養護室を空けない様心がけていた。

小・中・高生の教科がほぼ終わる午後7時頃に、二度目の食事が小一時間。その後、終講直後の午後9時半頃まで詰め、30分程かけて、N城址から程近い市内居所へ帰宅と言うのが大体の慣例であった。
勿論、鵜方病院の診療がある日は早朝に起き、その間の養護室は代理の保健師がフォローしてくれていた。この場合は、午後2時頃からの登院となるので、引き継ぎや申し送りの為、15分位は早着できる様に調整していた。

医師免許もあり、開業や、病院或いは公立などの学校勤務もできる立場なのだが、小町は、佐分利理事長の熱い希望と、経営役員と言う好待遇もあって、学院の養護主任を請ける事に決めた経緯がある。

5月下旬は、梅雨の前哨の様な曇りや雨がちの日々が、ほぼ一週間は続いた。月末だったろうか。豊(ゆたか)、徹と健(たける)の生徒たちは、平日の毎日午後、学校の後、学力補強と受験対策向けの、学院通いが続く。
月末のこの日、ようやく晴れ間が覗く好天に恵まれ、生徒たちの気持ちも少し軽くなった様な所が見られた様な。夕方から二限の教科を終えた所で、この三人が教室廊下に集まっていた。豊が言った。

「二人、悪いな。俺、ちょっと頭が痛いみたいなんで、この後 本荘先生の所に寄ってから帰るわ。今日は、マクドはつき合えそうにない。好けりゃ二人で行ってくれるか。ご免な」(これは、表向きの理由。実際、目立った症状はなかった)。
健「ありゃりゃ、今度は、豊野さんの具合が良くないですか?」 徹「痛いなら、我慢せずに診てもらった方が好いですね」
豊「有難うよ、そうするわ。特に、健とは今日辺り、ゆっくり話がしたかったんだが」 健「いや、又今度で好いですよ」

「お大事に」別行動となる、二少年の声を背に、豊は「ああ、どうも」と返し、学院の建物上階にある、養護室のドアを叩いた。「失礼します」

「どうぞ」の返事を確かめ中へ。「先生、ちょっと頭が痛いみたいで、宜しくお願いします」
「そうなんだ。困ったわね。とりあえず熱から診るわね」白衣姿の小町、豊の額に手を当て、触診。
熱はない様だ。続いて、口を開けさせて喉の様子も診る。夏風邪の可能性もあるからだ。
こちらも特段異常なし。小町は言った。「多分ね、少し疲れから来てると思う。頭痛薬を二回位出すけど、明日も続く様なら、病院で診てもらった方が好いわね」 「有難うございます。今夜は、大人しくしてないといけませんね」薬を受け取り、問診はひとまず終了。

「さてと」小町が言った。「ねえ豊君、この春から高等科に上がって、やっぱり忙しくなった?」 「そうですね。去年までとはかなり違いまして。同じ気でいると、拙いかな・・なんて思ってる所です」豊、こう返す。
小町「そうかぁ。すると、やっぱり気持ちの余裕とか、段々なくなって来るよね。青春の入り口だから、楽しむ事も、それは必要なんだけどね」 豊「ですよね。それが好い様にできると、本当は嬉しいんですが・・」暫く、こんなやり取りが続いた。そして・・

小町が、ちょっと資料を見に自席を立った時の事だ。書棚を向いたその時、豊はすかさず、師の後ろに寄り添い、白衣越しにもそれと分る、そのくびれたウェストの辺りに、両の手を滑り込ませた。「先生・・好きです・・」
「豊君、慌てないで・・」小町は、拒む様子を見せなかった。が・・「今夜は拙いわ。嫌な訳じゃない。日を改めて、もっと深い所の話をしようよ」 「はい、どうも済みません。ちょっと出過ぎた様ですね。でも、今の気持ちはマジですよ」と豊。

小町「うん、約束するわ。二・三日の内に、君の携帯に、周りから分らない様にメールする。それを待って、又ここへ来てくれる?」
豊「はい、かしこまりました。お言葉を信じて、その通りにしますね」 「きっとよ・・」その言葉と共に、小町は豊の背に腕を回す。
立ったままで二人、それが分っていた様に、唇を重ねる。二・三十秒は続いたろうか。

小町「豊君・・」 「はい」 「今夜は、ここまでにしましょう」 「了解しました。じゃ、ご連絡を待ってって事で。今夜は診て頂き、有難うございました」 「遅いから、気をつけてね」 「はい、先生も、どうかご安全に・・」 豊、こう言って養護室を後にした。
(つづく 本稿はフィクションであります)。

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