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この雨は こんな風に聴こえる 第11話「仲介」

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「ビクッ!」まだカメラを収めたばかりの、己の肩バッグから視線の移動ができなかった黒木が、一瞬動揺したのも無理はなかった。バッグの中身を落ち着かせ、視線を声の方へ移動した彼は、再び少しく動揺した。眼前に現れた女は、確かに宥海とはやや趣を異にしていたからだ。

「あぁ、ご免なさい。貴女が平 麗海(たいら・れいみ)さんですね」努めて落ち着いた返事をしたつもりだったが、対する麗海は 黒木の些かの動揺を悟ったかの様に、クスリと笑った。確かに長めの黒髪に いかにも日本女性といった面立ちの宥海よりはハーフ的な華が感じられる。丁度モデル兼タレントとして旬な魅力を誇る「M」や「「Y」に近い感じだろうか。少し栗色がかったブルネットに近い髪は長めなのだろうが、後ろで纏めていて下した時の全貌は分からない。その頭上に、淡色のストロー・ハットに近い鍔(つば)のある帽子を冠り、ポロシャツに似たゆとりのある白い半袖アッパーに淡色のワイド・パンツが合わせられる。靴はよく分からないが、どうもサンダル穿きの様だ。

「黒木さん・・」まだ落ち着かない様子の彼を見た麗海が続けた。「まぁ信じて下さいよ。姉とあたしは、確かに余り雰囲気が似てないから、初めは実の姉妹だって信じてもらえないとこがあるんですよね・・」 「あぁ、それも悪いですね。そんな見方しちゃいけないって思うんだけど・・それよりやっぱり、まだ貴女と向き合うの慣れてないせいかもですね・・」そう返しながら、黒木は少し端に寄って ベンチの傍らを空けた。「やっぱり・・」というか、麗海はそこへ躊躇なく腰を置いてきた。

彼女は続けた。「やっぱり TVでご覧になったの?姉のこと・・」 聞いた黒木は「えぇ、まぁね。去年辺りから民放 M局の気象情報に出られてるのチョコチョコ観てたんだけど、この前偶然 直にお話できる機会があってね。その辺はご存知?」 「勿論!聞きましたよ。あちらの道路沿いで JRの列車を撮影されてる所へ、ジョギングしてた姉がぶつかった件でしょ?」 「そうそう。ホントは反対側に歩道があるんだけど、あの時は引越屋さんが盛大に店開きしてて通れなかったの。それで・・」 「そうなんだ。でもある意味、ラッキーでしたね」 「うん。まぁそう思わんといけませんね」妹にそう返した時、不意に宥海との熱い夜の記憶が呼び返された想いがした。

「さてと、麗海さん・・」黒木は立ち上がりながら声をかけた。「俺、午後から就活なんです。一度部屋へ帰って、衣装替えしたいから、ちよっとの間 時間借りられるかな?」「良いですよ。あたしも午前中は暇だから。何なら今日は お昼食べて解散でも良いわね」「分かりやした。じゃあ、そういう事で。ちょっと歩くのはご免なさいね」 「いえいえ、気にしないわ。貴方のお住まいがチラ見えで、楽しみでもあるし・・」

麗海を伴い 一旦居所へと戻った黒木は、直ちにポロシャツにジーンズの平装からやや濃色の夏スーツ上下へと変わる。ネクタイも。その間、麗海は居間のソファに落ち着き、冷茶を嗜みながら FMラジオを聴いている。実はこの時、彼女を部屋に通した事が 続く出来事への導入部だったのだが、この時 黒木はそれを知る由もなかった。暫く後・・

「お待たせ!それじゃ、お姉さんからお借りする資料、預からないとね・・」 タイを締めたスーツ姿に変身した黒木が、麗海の隣に戻った。「あ、そうそう。それ、置いてかないと・・ね」笑いながら、バッグからバインダーを二帖出して卓上へ。主に気象予報士試験に関する参考書と宥海が作った資料、それに受験に臨み直筆で取ったノートなどだ。「よし、有難い!これで様子位は分かるだろう。麗海さん、大感謝ですよ!」 下方のあらぬ願望を抑え、彼は頭を下げた。

「遅くなってもいかん。行きますか・・」資料を受け取り、己のもう一つの居室に収めた黒木は、麗海をそれとなく促した。「そうね、今は行かないと。でも・・」 「はい・・」 「又近く、寄せてもらっても良いかしら?」 「!」この時、黒木は殆ど「万歳!」と叫び出しそうな風情だった。己が「又ゆっくりお越しを・・」と声をかけようとした所を、麗海の方から言い出したのだ。「もしかして、これは・・」 そして「言っちまえば『姉妹味比べ』位できるかも知れん。叶えば、夢だよな・・」と。勿論これは、想っていても口に出せない事だった。

半時程経って、再び外へ。この日の昼は、宥海の時と異なり 近くはあるもパスタの専門店へ。ピーク時は行列ができる程の人気店だが、この日は首尾よく入店できた。白壁の内装が斬新ながら、満席の時も割合落ち着ける店だ。軽い昼食とコーヒーやケーキを嗜み、暫くは互いの近況メインで語り合った。

麗海「そうかぁ。黒木さんは今、就活中なんだ」 黒木「そうなんです。以前の自動車関連のとこがどうも馴染めなくなってね。今は伯父貴の不動産関連を手伝いながら進路の事に向き合ってるってとこですね」 「なる程ね。お仕事は一生モンかもだから、じっくり慎重に決める事だわ。あたしも大きな事は言えないけどね」 

黒木「いやいや、定職があるだけマシでしょう。どこかへお勤めなの?」 麗海「その事よ。勤めではないけど、会社と契約してるとこはあるわね。あたし、衣装やアクセサリー関連のネット販売とかを自分でしてるんです」 「おお、そりゃ大変だ。自営は自営だもんね。契約の内容で仕事が大きく変わっちゃう、あれか?」 「まぁ、そんなとこもありますね・・」暫くの雑談を経て・・

麗海「丁度良かったわ。黒木さんの伯父様は、不動産関連のお仕事ですわね?」 黒木「そうです。伯父貴は、ビルのオーナーです」 「ハハ、尚願ったり叶ったりだわ。あたしね、今まで親元でお仕事もしてたんだけど、そろそろ自分の拠点があったら良いな・・なんて思ってたの。どうかしら、近い内に伯父様お持ちの物件を見せて頂く事とかってできるのかしら?」 「勿論、それは可能でしょう。急がれるの?」 「えぇ、できたら今日中にでもって思うんだけど・・」 「ちょっと待ってくれますかな?俺、夕方からなら都合がつくかも・・」黒木はそう返すと、己のスマート・フォンに記録したメモを見返してみた。

「麗海さん・・」 「はい・・」 「今日中なら 少し遅いけど 5:30pm位からどうですか?」 「5:30pmね。まぁ、良いでしょう。あたしも取引先との用件が一区切りで 一度家に帰る時間もあるし、そうしましょうか」 「了解です。俺の就活もそれまでには終わるから、それから物件案内って事で・・」 「分かりました。無理言って悪いわね。期待してます」 「ご期待に沿う様、頑張りますよ」 「それと、就活もね・・!」 「分かりやした。そっちも勿論本気でって事で!」 1pmになると、二人は熱見神宮近くで一旦別れた。

この日の就活を無難にこなし、夕方前には伯父の事務所へ赴き、麗海の物件下見希望を伝えて立ち入り許可を得た。場所は、彼の居所もある同じマンションの上階だ。「・・て事は」一瞬、彼は想った。「事と次第にもよるが、もしかすると麗海ちゃん、俺と同じ棟に入居する事になるかもって事か。まぁ、良し悪しはあるだろうが・・」 部屋の見取り図などの資料と合鍵を預かると、麗海との再会時間まで少しの間 居所に戻り、預かった宥海の資料に目を通したかった。余り良からぬ感情もありはしたが、それはまぁ良い。「とに角、彼女の眼前で不良な性欲とかが気づかれなけりゃ、それで良いんだ・・」その時は、そう思っていた。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 野々浦 暖
今回の「音」リンク 「蓮の花」 by サカナクション (下記タイトルです)
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