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轍(わだち)~それから 第11話「模様」

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佐分利学院の養護室にて、秘密教科の二限目があった同じ7月16日土曜、中等科生 健(たける)の伯父 中条は、甥の元恩師 初美と二度目の逢瀬を果たす事に。

それに先立つ10日の日曜午後、彼は、親許の分をも含め、買い物に出た。円頓寺の食品スーパー店「丸万ストア」に赴いた所で、同じく来店の初美と、偶然に出くわしたのである。

とりあえずその日は、互いに用件があったので、最寄の喫茶店で短時間の会話に留めたが、そこで16日土曜に会う約束を交わす。

その土曜、曇りの朝。中条は、例の「あいつ」によって起こされる。そう、向かい家の屋上に現れる「Kuso犬」である。
この朝、こいつは通行人に一通り吠えついた後、己の尻を追いかけて、グルグルと時計方向に回り出した。
「愉快な仔犬」とか言う童謡の歌詞通りになった訳だが、中条は「違うだろ!」と、ふと思ったものだ。

「あのアホが、仔犬の訳がねえ。どうショボくても、一応成犬だろうが・・」以前一度、この商家の玄関前を通ったのだが、「犬に注意」の看板に描かれていたのは、随分立派な大型犬だった。「看板に偽りあり」とはこの事だ。
「何だよ。全然事実と違うやんか」男は、これを見て内心失笑したものだ。「住んでるのは、こんなのと違う。もっとショボくて、貧相で、低レベルなKuso犬だわ!」
そのショボい、貧相で低級な輩は、それを証明するかの様に、ひたすら己の尻を追って、グルグルと回っている。「本当になあ、汚い面が、汚い尻を追い廻してりゃ世話ねえ・・」半ば呆れ顔で眺める中条であった。

男は途中で愛想が尽き、ヴェランダを離れてコーヒーを入れに向かう。だからこの朝、こいつが粗相をしたかどうかは知らない。
朝食とTV報道チェックの後、8時前出社も普段通り。物流倉庫にも出入りしての、週明けの段取りと昼食の後、帰宅。
掃除など雑用を経て、夕方前、市営地下鉄でN市中央駅へ。この日は、前回より早い午後5時に、中央駅に近い、名電バス・ターミナル前の巨大人形オブジェ足元で、女と待ち合わせる事に。

今度は、中条が先着。直後に姿を現した初美は、薄黄色のワンピースにサンダル履きと言う、夏らしい装い。肩バッグは、やはり少し大きめだ。
「今夜は、ウチ飲みがしたいわ」と言う彼女の希望で、バス・ターミナル真下辺りの「デパ地下」で、暫し買い物に勤しむ。
「あ、これ、買おう!」初美、セロリを一株手に。「ああ、健康志向でしょ」中条が言うと、ニヤリとして「それもあるけど、夜の事にも好いのよ」 「はいはい。つまり、性愛(セックス)の事ですね」 「そうそう」初美、こう言って笑う。セロリに含まれる、ステロイド系の養分が、夜の行為にとり、有益らしい。

「まあ、好いでしょう。後、胡瓜(きゅうり)とか人参も要るよな」中条は、後、赤ピーマンと、チーズが少しあると好い事も知っていた。大事なのがブルー・チーズ。匂いが強い、わざと青黴(あおかび)を生じた、この癖のあるチーズが初美の大好物なのだ。「いや~、ついて行けんわ」中条は、自身には、表面が胡椒(こしょう)で真っ黒けのブラック・ペッパー・チーズを選んだ。それと、二人の好みの生チーズ「カマンベール」と、かいわれ大根を入れて、買い物は終了。この日の酒気は、彼の所に国産ワイン「十勝トカップ」の赤が、食後の果物と共に入手済だ。

買い物を終えると、二人はタクシーに乗り、中条の居所へ。彼が大学生の頃、北海道・小樽の硝子ショップで入手した、ワイン・グラスを使う事にする。このグラスは「ファクトリー・アウトレット」と言って、高温成形の時、僅かに気泡が入るなどの難がある他は、正規の製品と同様に使える、云わばお買い得品と言って良いものだ。「反って、手作り感があったりして、好いかもね」初美の感想。

買い物の野菜は、主にスティックにして、チーズの添え物にする。セロリの葉と胡瓜の端寄り、それに赤ピーマンとかいわれ大根は、中条が持っていた赤オニオン、シーチキン缶と共に、サラダに仕上げ。メインは、宅配シーフード・ピザのLサイズだ。
前回と同じく、初美を先に入浴させ、その間に中条が野菜洗いとスティック、サラダへの仕上げを行い。暫くして戻ると、入れ替わりに中条が入浴。その間に、初美が配膳を済ませる手筈だ。二人共風呂を終える頃、ピザが届けられる。

中条が赤ワインを開け、乾杯。暫くは、世間一般や経済、音楽の話材で、飲みながら雑談。それから・・
初美「彼たち二人は、元気にしてるの?」 中条「はいはい。お蔭で、元気にやってますですよ」 初美「それは良かった。去年のお盆明けから会ってないから、さすがに気になったのよ」 「ああ、もうそんなになるかな。一年は、早いね」中条、そう言いながら、振動した自身のスマホを改めると、甥の健からSMSが入っていた。

「夜遊び伯父さん、今晩は」 「こらこら、毎晩遊んどらんぞ。今、食事中やろ?」
中条、返す。健「いやいや、今なら送受信大丈夫」 「冗談はさておき、何なんだ?」 「実はね、ちょっと徹の事で、近い内に話がしたいんですよ」 「ああ、それはいいよ。都合の好い時、聞かしてもらおう。所でお前たち、そろそろ夏の強化学級だろ」 「そうなんですよね。24日の日曜から、8月10日の水曜までで、月末は一度帰れるけどね」 「じゃあ、こうするか。強化学級前の、22日の金曜に、会う席を作るって事で、それなら俺は、次の23日の土曜を休みにするからさ」 「ああ、それでも好いね。じゃ、徹に伝えて、その段取りで話をしますよ」 「了解。宜しくな」SMS通信ここまで。

中条「初ちゃん、ご免。今ちょっと、健からメールが来てたんで、話をしたって事で」 「ううん、好いわ。健君も、元気そうで何よりよ」初美、ブルー・チーズの一片をセロリ・スティックに載せながら、こう返す。
「まさか彼たち、貴方とあたしが会ってるって事、知らないわよね」 「勿論。連中には、まだ一切知らせておらんよ」中条、こう返しながら「ただなあ、今の話っぷりからすると、俺に会いてぇのは、むしろ徹君の方の様な感じがせんでもねえなあ」

それを聞いた初美、少し覚えがあった。健、徹の二少年は、前年夏の特別林間学級の折、養護主任 小町と、それぞれ一度だけ「関係」を持った。先に交わった徹は、ゴム(コンドーム)着用だったのに対し、後の健は、ゴムを着けない直接の交わりだったのだ。或いは意外と、小町はその事に執着しているのかも知れない。

「新さん、この事は余り大声じゃ言えないけど・・」前置きの上で、初美は、以上の事を、中条に語った。「いや、よく言ってくれた。でも、それが事実なら、俺たちも必要に応じて動かないかんな」 「そうなるかもね。まずは、小町さんがどう言う考えか、様子を見る必要があるけど」 「勿論それ大事。その上で、彼女がその気なら、何とかして、徹君を守らないかん状況も出て来そうだな」

初美、続ける「実は、あたしも、まだ徹への想いを消しきれない所があってね。彼は、本当に良くしてくれたし、夜の方も、それは思いやりのある、素敵な出方だったのよ」初めて、中条に対し、封印しかけていた「あの夏の夜」の事を、吐露し披瀝したのであった。

「それは分る。だけどよ、余り詳しく言うと、反って貴女の為にならんのと違うかな。俺は好いけど」中条が言うと「まあ、貴方は健君の伯父さんだし、徹の保護者みたいな所もあるから、明かしてもいいと思ったのよ」初美、こう返す。男は、例え間違いだったとしても、女のこの気持ちを受け止めるべきと心得た。「分った。その想いは、俺もしかと覚えとく。ただ、徹君も健も、もう去年の夏みたいな間柄は望んでおらん、と俺は見てるよ」

「あたしもそう思うわ。何しろ、まだ幼いんだし、あたしがこだわり続ける事で、彼たちの心を歪めてもいけないしね」
「初ちゃん、よく言った!俺も、そこん所は大事にせんと、て思う訳よ」 「そうよね。又、話したくなったら、聞いてくれるかしら?」「俺は好い。いつでもどうぞ!」 「有難う!今夜のワイン、とても美味しかったわ」 「良かったなあ。食事も全部好い感じやったし」
午後9時を過ぎ、赤ワインがほぼ空き、料理もあらかたなくなった所で「じゃ、少ししたら、次の事を・・」 「そうやね」

速やかな片付けと、歯磨きなどの後、二人は、ソファに戻って睦みだした。
「初ちゃん」中条が言う。「はい」 「この間忘れてたけど、キスの前にさ、こうやって、手指を絡めると、中々好い気持ちになれるんだ」男は、女の左手指に、右手指を合せる様な感じで絡めて行く。「ああ、中々好い感じね」 「そうそう。これ、ベッドの時にも、すると好いね」 「お願いするわ」 「了解。今度は、覚えとかんとね」手指を絡ませながら、二人はゆっくりと唇を合せて行った。
(つづく 本稿はフィクションであります)。

今回の人物壁紙 美咲 唯
松岡直也さんの今回楽曲「ザ・マジシャン(The Magician)」下記タイトルです。
The Magician
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