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轍(わだち)~それから 第32話「吐露」

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「今日も元気だ、アホ同士・・」熱い一夜から覚めた、中条の一言。アホ同士とは勿論、斜め向かい家の屋上に現れたKuso犬と、階下を通った散歩人の連れた飼い犬の、けたたましいやり合いである。「あんな奴らに限って、悪運が強くてさ、バカ長生きしやがるんだよな・・」その頃には、隣で寝ていた初美も起き出して来て「お早う!今朝も賑やかね」と声かけ。

「ああ、お早う。まあいつもの事さ。うるせぇのは分ってるんだが、相手が四足じゃ、文句も何もつけられんで、困ったもんだわ~」嘆かわしい苦笑を浮かべ、男は返した。対する女は「でもこれ、いつもなんでしょ。彼のお蔭で、お勤めも遅れずに済んでるんじゃなくって?」意地悪く訊く。「嫌だなあ、初ちゃん。それこの前、ウチの健(たける)も同じ様な事言ってたわ~」返しながら中条、又苦笑。

彼は続ける「さあ、着替えといでよ。貴女、又ノーパンなんだろ。外から見えるかもだぞ!」 「ハハ、まあね。7Fだから大丈夫とは思うけどさ」女は笑ってこう返し、着替えに入る。「さてと・・」こう言いながら、男はTVをつけ、いつもの報道番組に見入りながら「今日昼まで、どうしようかな」少し考え。

薄黄のワンピと、上シャツ+ジーンズに着替えた二人、まずは、馴染みの喫茶店で朝食。初美「一度、自分ちへ、荷物を取りに寄りたいわ。お昼を食べて解散でどうかしら?」 中条「いいでしょう。所で、こちらへはいつ戻るの?」 「21日の夕方よ。16日夜も戻るけど、お盆明けにもう一度帰る必要があってね」 「大変だな、気を付けて。遅い時間の移動は避けてな」 「ええ、有難う。貴方も元気でね」暫くはこんな感じで、世間ネタを交えての会話。終わって会計の時、店主から「あの女性(ひと)とはどう?進展してるの?」と訊かれた中条「まあ、一進一退ね」苦笑しながら、こう答えた。

午前11時前、初美と中条は、彼の車でその居所を発つ。一度、初美の居所で手回り品を少し載せた後、勤務先でもある甥の親許近くの馴染み処で、昼食。甥 健や徹、上級生の豊野 豊(とよの・ゆたか)とは、20日土曜の午後に会う事となっており、それは、初美にも知らせてあった。「じゃ、気をつけて。親御さんにも宜しく。又今度」 「有難う。貴方も元気で、又ね」JR中央駅・新幹線口で、ひとまず見送り。

盆の間は、前半夏らしい猛暑だったが、後半に入ると、時雨(しぐれ)なども絡む、不安定な空模様が多くなった。思い思いの普段着で、中条と少年たちが、再び健の実家応接間に集まったのも、そんな日の午後だった。サイダーやコカ・コーラ、アイス・コーヒーなど、それぞれの飲み物を手に、中条を議長役に会話が進められた。ここは丁度一年前、徹、健の二少年が、担任講師だった初美と、特別林間学級の終礼を交わした、思い出の場所でもある。

「皆、強化学級ご苦労やった。元気そうで何より。それぞれに、有意義だった・・と、俺は信じたい」男は、苦笑を交えて言い「で、今日はもう分ってると思うが、豊君の予告話を聞いて、我々がどうすべきか、考えをまとめたく思うんだな」 「・・ですね。話がまとめられる様、俺たちも協力しますよ」少年たちも返し。 「是非、宜しくな。それじゃ、豊君、報告をお願い」

「はい、分りました」豊、切り出す。「この前の事ですが、これは近い内に、伯父さんやお前たちに伝えんとって思った事なんです。それは・・」 「何となく分る。小町先生との間柄に関する事かな?」中条が訊くと「そうです。正直、俺は小町先生ととても・・とても親しい間柄になってるって事でして・・」 「豊君、無理するな。大体の所は理解してるぞ」男はこう返し。「有難うございます。今日は、話せるだけお話ししますから」豊も応じ。傍らで聞く健、徹の二少年「やっぱり・・」の風情で、顔を見合わせ頷いた。

中条は訊く。「下品な出方で済まねぇが、要するに、君は童貞卒業をしたって事か?」 「仰る通りです」豊、返す。「そうか。ある意味おめでとう。詳しくは訊かんが、勿論こりゃ、手放しじゃ喜べんのも事実やな」男は続け「それで、ここからが問題なんだが、君は、もう少し頑張って、小町先生の注意を引っ張っておく事ってできるかな?」

 豊「はい。必要なら頑張ってみますが。伯父さん、やはり先生と俺の間柄が、学院の外に漏れるとって不安はありますね」 「分った。あのな、君の気が進まんのなら諦めるが、もし何なら、俺から直に、学院の理事長と話をしたっていいんだぜ」 「そうですね。いよいよ必要ならお願いするかもですが、今ん所は、様子見でも良いと思うんです。要は先生を、みだりに健や徹に近づけなきゃ良いんですもんね」 「そう言う事だ」年長者二人の会話は、大体以上であった。

中条、今度は徹と甥、二少年に向け、語る。「まあ、今の話で豊君の、この夏の経験は分ったと思うんだが、誤解されん様に言えば、お前たちは、今も小町先生の、言わば標的にされてるって事だ。ただ、まだ中坊のお前たちに、大人みたいな接し方とか関わり方ってのは、やはり拙い。そりゃ豊君にしたって同じさ。で、本当は良かねぇんだが、お前たちが小町先生にマークされん様、もう暫く、豊君がそっちの方を頑張ってくれる事になったって事だ。

これから暫くの間、俺たちは、できるだけ連絡をよく取り、失敗や粗相なき様にしていかないかん。そうすれば、徹君や健が、望まん変な目に遭わずに済むだろうって事だよ。小町先生は優秀なお医者様やから、悪く思いたくはねぇが、あっちの欲求だけは取り下げてもらわないかんな。豊君にしたって、そうだろう。」

徹「・・ですね。考えたくはないですが、小町先生からそんな風に思われてたって、俺たち正直ショックですよ。健も。なあ、同じだろう」二少年は、顔を曇らせて頷き合った。「お前たちの置かれた状況は分った。さっき、伯父さんとも話したけど、俺、できるだけ頑張ってみるから、お前たちも是非協力してくれな」豊が言うと「豊野さん、有難うございます。本当に、ご面倒かけて済みません。宜しく、お願いします。伯父さんもね」二少年は、深々と頭を下げた。

「よしっ皆、分りゃいいんだ。こいつたちも言う様に、豊君にはもう暫く面倒をかけるが、何とか乗り切ろうじゃん。早く、受験勉強にも集中してもらわにゃいかんし」 「ですね。でも良いですよ。俺も協力しますから」豊、こう返す。「有難う。とに角、皆の為に、ここを乗り切らんとな」 「・・ですね。それでさ、この問題が片付いたら、伯父さん、又AV見せてくれるかな?」健、こう出た。

中条が「言うと思った!仕様がねぇが、まあいいや。その時は、ここの四人で鑑賞会してやるよ」返すと 「やった~!これで努力目標ができたぞ。さあ、頑張ろう!」三少年は、一斉に反応した。「・・たく。そう言う事になると、元気倍増になる。困った奴らだ。まあ、その時は楽しませてやるがな」 「はい、宜しくお願いします!」その後、プロ野球や各種スポーツなどの話題で、夕方まで盛り上がった後、解散。

帰宅した中条は、いつも通り、居所の雑用などして、夕食の時間に。出かけるか、ウチ飲みにするか、迷っていた所に、先程まで一緒だった豊からSMS着信。「伯父さん、先程は有難うございました」 「いいや、こちらこそ。何かあったかな?」男が返すと、
豊「実は今、小町先生から着信があって、来週会いたいとの希望を伺いました。伯父さんにもお伝えした方が良いと思いまして」 「そうか、有難う。そしたら、小町先生の希望を聞いといてくれんか?その様子見て、俺は動くからな」 「はい、分りました。その時は、宜しくお願いします」 「それでさ、この話は、まだあいつらには伝えなくて良いな」 「そうですね。今の所は伝えなくて良いと思いますよ」 「よしゃ。そいじゃ、それで進めてくれるか?」 「有難うございます。それで行きます。それとですね、この後、小町先生から伯父さんに連絡があるかもですね」 「そうか、有難う。一応、つもりしとくわ」交信終了。

ボツボツと、居所の雑用の目途が立った頃、久しぶりで、栄町近くに住む悪友から連絡あり。この夜は、そちらへ流れる事に。「錦」と呼ばれる繁華街で三次会まで行った後、市営地下鉄で居所へ戻ったのは、日付が変わる間近。久々に酔い、ざっとシャワーのみ浴びて、TVの深夜番組をチェックする中条。脳裏にあるは、先週の、初美と過ごした熱い記憶。それを反芻して下方が温まった所へ、電話着信。豊の予告通り、小町からだ。酔いで忘れかけていた。相変わらず、時雨が交じる、不安定な空模様だ。

「今晩は。ご機嫌如何?」 「ああ、お晩です。天気今一でいけませんね」中条、こう返す。小町「いえいえ、お元気そうで何より。声聞いて安心したわ」 「有難う。今夜も学院ですか?」 「そうよ。論文の調べものが多くて、ちょっと鬱陶しいわね」 「そりゃ大変だ。夏バテし易いから、ご用心って事で」 「有難う。そうなのよね。栄養も休養も、手が抜けない所だし」 「まあ、こうしてやり取りするのも、気分転換になって良いかもね。時間はいいんですか?」「もう暫く大丈夫よ。所で新さん」 「はい、何でしょう?」

小町「来週の土曜、つまり、今月最後のね。できれば、その時ちょっと貴方に会いたいの。つもる話もありますし・・」 中条「そうですか。まあ分ります。ですが、土曜もどうなるか分らんから、とりあえずご希望だけ伺うって事でいいかな?週が明けりゃ、大体の様子が見えて来るから、はっきりお返事できると思うんだ。そう言う事で進めるってのはどうですか?」 「いいわ。じゃ、それで行きましょう。詰めは週明けの月・火曜の夜辺りで。色良いお返事、待ってるわ。じゃあね」 「はい。どうかご無理なく。そこからは夜景が好いでしょう」 「そう、ここからの夜景は、とても素敵よ」小町は言った。
(つづく 本稿はフィクションであります)。

今回の人物壁紙 AIKA
松岡直也さんの今回楽曲「フリー・ボヤージ(Free Voyage)」下記タイトルです。
Free Voyage
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